第15話

この学校って多分頭がおかしい。


毎月、毎月何かしらの行事が行われていて、逆にその合間に授業があるんじゃないの?って疑問すら湧き起こる。


そのくせ全国模試で上位の子とかもいるみたいだし、国公立に行く子だってそれなりの人数いるみたいだし、皆さんいつお勉強してるのかしら…


でもって今月は皆んながお楽しみにしてる球技大会なんだって。

何にエントリーしようかなって悩んではいるがゲートボールを推薦してそれに出るかな。

クラブみたいなのとか道具揃える金あるわけないだろって言われたら、バットとボールでいいやん!って強引に議案を通す自信もある。


あとは何だろモルック?あのなんか筒みたいなの投げてボーリングみたいなやつ?ルールよく分からないし、筒って時点で球技じゃないか…


サッカーは人数の関係で去年やらなかったらしいし、バスケとかバレーとかドッジボールとかになるのかな。


去年出てないし、特に移動して見学してないし、佐藤愛子は色んなのに出てたって聞いたけど記憶もない。


サッカーの方でAチームに上がれてないから公式戦には出れないだろうけど、練習試合もあるから体力温存したいし、怪我したくないし、うーん正直休みたい…


「今日のホームルームは今月末にある球技大会の種目が決定しましたので、それに各個人最低一種目の参加する競技を決めていきたいと思います」

佐藤愛子が俺の隣で議事進行を行っていて、体育祭同様優勝しかない!って騒いでいる長富杏香がニヤリとこちらを見て笑っていたような気がしたんだが、今大会の種目を見て納得。

ジュニアサイズグランドよりも小さく、フットサルよりは大きい特別ルールの六人制サッカーが種目に加わっている。

ドッヂボールもバスケも特別ルールで六人制、あとはバレーボールで全四種目。各種目ともニチームずつ、交代要員二人で、一チーム八人の参加。同種目にダブルエントリーは禁止らしい。


初日に予選があって、二日目が順位戦。体育祭は全学年同一クラスでの対抗戦だったが、今回は各学年六クラス、十八クラス男子女子混合での対抗戦になるようだ。


これって俺サッカー選ばなきゃダメな雰囲気だよね…


「たっちゃんは何に参加しますか?」

一クラス四十人の生徒がいて、男女比が4:6と女子の方がどのクラスもどの学年も大体多いらしい。

球技が苦手な人も一種目は出ないといけないため、各種目とも、まずは立候補となったようだ。


気がついたら皆んなの前でもたっちゃんって呼ぶようになっていて、文化祭の時に手を繋いで見学してたとか、どこどこのお化け屋敷のクラスでは腕組んでたとか相変わらず尾鰭が着きまくって大海を泳ぎ回るスピードはカジキマグロクラス。

佐藤さんと付き合ってるの?って何回か聞かれた。

うーん付き合ってはいないんだよな…

そう伝えるとほっとしたように皆が帰っていくのだけど、嘘は言ってないから、ま、いっかって。

佐藤愛子はこの回答があまり面白くはないみたいで、これ聞かれた後は不貞腐れモードになる事が多いから、もう放っておいて欲しい…


話は球技大会に戻るのだが、俺だけがどうやらどの種目にも立候補していなかったようで、佐藤愛子にそう問われるも、ゲートボールもモルックもないしな…

って声に出てたようで


「なんて?」

って声色は怒り気味。


「まだ一巡目でしょ?余ってるの適当にやるからいいよ」

それにキレたのが佐藤愛子ではなく長富杏香でもなく、なんと半田和成。


「冴木。総合優勝狙ってるのは分かってるよな?当然そうなると確実にサッカーは選んでもらわないと困るんだよ」

なんかいつも陽気で穏やかな半田さんとは思えない威圧感で、脅される。

各種目ニチームなのだが、男子多めのチームには佐藤愛子が大抵入っているのが面白い。それだけスポーツ万能なんだろうって思っていたら、もちろん何やらしても佐藤愛子は凄いけど、一番は褒め上手な佐藤愛子がチームに入ると男子のやる気が上がるからだと半田和成。

あ、そういう理由ね。


「たっちゃんサッカーは決まりね。後はどうする?」

「人が足りないとこでいいよ。バスケもバレーもドッヂボールも授業でしかやった事ないからその程度と思ってくれて構わない」

サッカーは出来るんだって声がいくつか聞こえてきたんだが、ま、見てのお楽しみだよって半田和成がドヤ顔してる意味が分からない。

佐藤愛子を見ると薄く微笑んでいるし、長富杏香はしてやったりって顔で鼻息荒いし、本当にこの学校の生徒たちっていつ勉強してんだよ。勉強方法俺にも伝授してくれよ…


とりあえず放課後に全体練習の時間が、各学年毎に、各種目毎にあるのだが、この日はサッカーチームの練習なんだとか。

グランドの使用は各クラスとも球技大会までは一回しか出来ないらしく、ガチのクラスは今日の俺たちのようにフットサルコートなどを借りてやるんだと…

ガチすぎじゃない?


で、今は先日も生徒会コンビと一緒に来たフットサルコート。

うちのクラスからはサッカーを選んだ十六人全員と長富杏香が。因みに俺の他の参加種目はバスケになったんだと。ゲートボールの夢立たれた瞬間でもある。


球技大会のサッカーでは、より多くの得点が入るように、ゴールはプロの試合と同じ通常サイズで、グランドはフットサルコートよりは大きめ。時間は前後半15分ずつなんだとか。

そんなでかいゴールでフットサル程度のグランドとか点数入れ放題だろ。俺キーパーでいいかな…


更衣室で着替え、時間になりフットサルコートに入ると、隣の面で始めようとしてた人たちがこちらを指差して何か言っている感じ。

ヘアバンドをして髪を後ろに流してサッカーモードに切り替えると


「あーやっぱ龍臣君じゃん!」

「本当だー龍臣!」

先ほどから指差してきてた人たちの方を再度見ると、いつかビーチサッカーで遊んでもらった濱野と澤田、その他大勢の人たちがいる。

ごめん…濱野君と澤田さん以外名前すら覚えてないへっぽこです。


うちのクラスの人たちも近づいてきた陽キャな大学生を見てる。半田和成、佐藤愛子に茅ヶ崎彩音と長富杏香。

うん、こちらもクラスメイトなのに名前よく覚えてない…


小走りでくる濱野君と澤田さん。なんと二人から久しぶり!って熱い抱擁まで。

この人たちは陽キャじゃなくて、パリピじゃなくて、外国人なのかもしれない。

大学生にらなる条件がボディーランゲージ多めにね!って事なら大学行くのやめようかな…


澤田さん。澤田菜緒さんは時々LINEで遊びに行こうよって連絡もらってたんだけど、文化祭とか忙しかったし、大学生のお姉さんと遊びって何?どこ連れて行かれるの?って陰キャ発揮しまくって拒否してた。


「龍臣くん私がデート誘っても無理、忙しい、眠いって全部拒否だもん。菜緒マジ泣きそうだったよ」

「バーカ、お前それ嫌われてんだから察しろよ」

そんなやりとりを俺の前で繰り広げて笑っているのだが、デートって言葉に敏感になる人がこちらにはいるので騒がないで欲しい…


「たっちゃん。この人たちはどういう人たちなのかしら?」

ほら来ちゃったよ。顔だけで目が笑ってないし…


「ほら、あの、文化祭の時、海行くって言ってたやつで、その海でビーチサッカーして遊んでもらってた人たち。ま、なんか色々あって世話になった」

その時のことは後々話してる。多分あの時ビーチサッカーしてこころ穏やかになってなかったらやばかったなって。恩人だねって笑ってくれてたんで、悪い印象なかったと思うけど、デートはヤバイ…

それから、女性もいたのね。連絡取り合ってたなんて知らなかったわって小声で言ってるのが怖い…ごめん言ってなかったかも…


「見てみて!濱野くん。凄い美人のJKがいる!龍臣君の彼女?彼女?」

二人でほぇーって言っててちょっと面白い。


「たっちゃんの許嫁の佐藤愛子って言います。先日はお世話になったみたいでありがとございました」

礼儀正しく深々とお辞儀。何言ってんだこいつ。目の前の二人だけじゃなく、うちのクラスメイトもドン引きですよ。笑ってるの長富杏香だけだし。これ俺のチームメイトに言ったようなジョークじゃなくて、牽制的な本気のやつだろ。クラスメイトには泣きそうなやつまでいるじゃねえか…もう俺帰りたい…


なんかそれからも色々と質問とかお話とかしてて、クラスメイトは練習始めてて、後から行くって断って、久々の再会に華咲かせてた。


佐藤愛子も練習しないで俺の腕ずっと掴んでるし、サッカーやる格好で薄着なんだからあんま密着すんなって顔赤くしてたら、二人に揶揄われるし。

お互い二時間借りてる事が判明したので、最後の方ミニゲームしようって提案されたので、皆んなに聞いて見ないとな。


とりあえず練習参加しますか。

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