第141話 ステージを終えて

 ステージを下りた俺たちは、広場の脇を通って通りへと抜ける。その途中でステージを見ていた人からたくさん声を掛けてもらった。


 すごかっただとか、感動しただとか、良い評判ばかりでとても嬉しかった。広場の端からでもステージの鮮やかな炎がはっきりと見えたそうだ。


 あんなにたくさんの人が俺たちのステージに熱狂して──すごかったな。あれだけ人がいれば、見てくれた人から魔法剣士の一人や二人──いや、十人くらい生まれてもおかしくないんじゃないか。


 孤児院のときはもしかしたら、といった程度だったが、今回のことで「弟子が増える」というのが一気に現実味を帯びてきた。


 もし新しく弟子ができれば、俺は兄弟子になるのか。兄弟子……悪くない響きかもしれない。




 通りへと出てからは呼び止められることもなく、すいすいと道場まで戻ることが出来た。もともと直前の練習のときにうちで打ち上げをしようという話をしていたのだ。


 街にはごった返しており、しかもこの時間帯は酒を飲む人が多い。つまるところ、いつものラムハに比べて治安がよくないのだ。


 どこかの店で打ち上げをしようにも、子どもを連れていくのはやめた方がいいということになった。ならばうちで──とヘルガさんが言ってくれて、俺たちが練習をしているときからヘルガさんが料理を作ってくれているのだ。


 師匠が鍵を開け中に入ると、食堂の方からジュージューと音が聞こえる。ヘルガさんが料理をしているのだろうと、荷物を置いてから食堂へと向かう。


 食堂に近づくにつれてお肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。それにつられたのか、アルのお腹がぐぅと鳴る。


 あはは、とはにかむアルに微笑ましいといった表情の大人たち。


「わぁぁぁぁ……!」


 食堂に入ると、すでにたくさんの料理がテーブルに並べられていた。どれも美味しそうで、アルとドリーだけでなくみんなが目を輝かせている。


「おかえりなさいませ、もう少しお待ちいただけますか」


 フライパンで何かを焼きながら、厨房から顔だけを出してヘルガさんが言う。


 師匠がジュースを持ってきて、それを注ぎながら待っていると、ヘルガさんが最後の料理を持ってくる。ステーキだ──匂いだけでなく、見た目もとても美味しそうだ。


 ヘルガさんもエプロンを外して席に座り、それからみんなでジュースの注がれたグラスを掲げる。


「ステージの成功を祝して──乾杯!」


 促された師匠が音頭を取り、グラスを軽くぶつける。さあ宴の始まりだ!

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