第138話 ステージ

 気を取り直してステージを見に行く。人に押されるようにして通りから広場に入り、そこから隙間を縫うようにしてステージが見える位置まで移動するのは大変だったが、なんとかたどり着けた。


 ステージでは大道芸や踊り、楽器の演奏をいろんな人が入れ替わり立ち代わりやっていた。どれも見ていて楽しく、周りの人たちもものすごく盛り上がっていた。


 こんなにたくさんの人が見るステージに俺たちも立つと改めて考えると、すごいことだと思う一方、怖いという気持ちが湧いてくる。練習通りに出来なかったら──もし、何かハプニングが起こってしまったら──そう考えるとぐるぐると同じことを考え続けてしまいそうだったので、今は考えないことにした。


 昼には帰ってくるように言われてたから、そろそろ帰らないと。きっとここから抜け出すのにも時間がかかるだろうから、ここらで抜けないと。




 行きと同じように人波に揉まれつつ、道場まで戻って昼食を摂る。もはや露店で買える状況ではないため、ラムハに住んでいる人たちは必ず昼食は家で食べるのだとか。


 食べ終えて、しばらくそわそわと落ち着かない時間を過ごしていると、最後の練習のためにマシュー一家がやってくる。


 元気だった子どもたちもさすがに緊張している様子だったが、その演奏はいつもと変わらず安定していた。


 俺たちが疲れきってしまっては困るので、練習もほどほどにして、くつろぎながら本番の時間になるのを待っていた。くつろぐとはいっても、ずっとそわそわしていて心は休まらなかったが。


 そして、時間になり師匠と俺、そしてマシュー一家の六人はステージへと向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る