第120話 演舞
「コルネ兄ちゃんが魔法剣を見せてくれるんだって」
「まほーけんってなに?」
「んー、よく分かんない。シスターはキラキラって言ってた」
ぺちゃくちゃと喋りながら子どもたちが外に出てくる。魔法剣が何なのか知らない子もいるようだ。師匠と俺意外に使っている人を見たことがないほどだから、知らないのも無理はない。
「シスター、あたし暗いの怖いよぉ」
「大丈夫よ、私が手をつないでるから」
「うん」
小さい子たちはシスターや年長の子どもが手をつないでいる。怖がるのもそうだが、小さい子が走り回ると危ないからでもある。剣が光っていてもこちらから向こうはよく見えないからな。
「みんな、ちゃんと手はつないだかしら」
「「「はーい」」」
「それじゃ、準備はできたから、よろしくね」
シスターがそう言うのを聞いて、俺は一つ深呼吸をしてから最初の構えを取る。そして光の魔法を剣に纏わせると、剣は淡く光る。
「光った!」
「綺麗……」
子どもたちの反応もいいようだ。そこからゆったりとした動きで、流れるように剣を振るう。
ゆったりと動く光は、神秘さを醸しだしているはずだ。不安だったので、本番前に一度マリーに見せたところ、そう言ってくれたので、子どもたちもそう感じていると信じたい。
ゆったりとした動きは一見簡単そうだが、重さのある剣を勢いに任せずに動かすのはものすごく筋肉を使うため、ここのパートが一番きつい。闇が表情を隠してくれて助かった。
一度動きを止め、剣をまっすぐに構えなおす。子どもたちは剣が動かなくなったことを不思議に思い、さらに剣に注目するだろう。
注目を集めてからの──雷の魔法剣! 魔法を切り替えると同時に、眼前の剣が青白く強い光に包まれる。
「ピカピカだー!」
「かっこいい!」
ちびっこたちの言葉に心の中でにっこりしながら、今度は普段の動きと同じ速さで剣を振るう。素早く剣を振るうと、剣の軌跡が光の筋となって現れる。
光の筋は雷鳴とともに走る閃光のように、夜闇を切り裂いていく。順調に型稽古の動きをなぞり、最後の動きから剣を横に一閃する動きにつなげる。
動きの中で剣を横に薙ぎながら、魔法を雷から炎に切り替える。振りはじめは青白かった剣が、振り抜くころには赤く燃え盛る剣に変わっている。
炎を剣先の少し先まで伸ばし、舞を踊るように大きく動くことを意識する。剣を振るうごとに炎が尾を引くように軌跡を描き、火の粉が弾けるパチパチという音は心が躍るようだ。
「わぁ……!」
煌々と燃える炎に、赤く照らされた子どもたちの瞳の中には小さい炎があった。
あの日俺がそうだったように、この魔法剣は子どもたちの眼にキラキラと輝いて映っているだろうか。
そして、もしかしたら──もしかしたら子どもたちの中から新たな魔法剣士が生まれるのだろうか。
そんなことを考えながら剣を振るいつづけ──そしてまた最初のように真正面にもう一度剣を構えなおし、フッと魔法を解く。
短い静寂の後に、ワッと子どもたちの歓声が上がる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます