第121話 演舞を終えて

 少し弾んだ息を整えながら子どもたちのところへ向かおうとすると、小さな子どもたちが駆け寄ってくる。


「キラキラで、パチパチで、すごかった!」

「おれ、大きくなったら魔法剣士になる!」

「おれも!おれも!」


 どうやら俺の魔法剣は大盛況だったようだ。子どもたちが喜んでくれてよかった。


 将来、この子たちは本当に魔法剣士になるのだろうか。一人でもいいから増えてほしいところだ。


 シスターが地面に置いていたランタンに魔法で火を点けると、シスターの周りに立っている子どもたちの顔が闇夜に浮かび上がる。


 子どもたちのほとんどが、魂を抜かれでもしたかのように、恍惚とした表情をしていた。おそらくまだ余韻に浸っているのだろう。


 ランタンの灯を見て、こちら側に戻ってきたのかハッとする子どもたち。


 一人の少女が手をつないでいた小さい女の子に半ば引きずられるようにして、子どもたちに囲まれて身動きの取れない俺のところまで来る。


「あたちも、魔法剣士になって、キラキラすゆの! ミリアと一緒にキラキラすゆ!」


 そう興奮気味に伝える女の子の言葉に、連れてこられた少女が慌てだす。きっとこの子がミリアなのだろう。


「えっと、私もキラキラする──じゃなくてあの、魔法剣、とても綺麗でした。最初の闇に揺蕩うような淡い光は神秘的ですごく綺麗でしたし、次の青白い雷のようなあの光も鮮烈でよかったですし、最後の炎──あれは特にすごかったです! 赤々と燃える炎を纏った剣が火の粉を散らすのはずっと見ていられます…………と、とにかくすごかったです」


 いきなり結構なボリュームの感想が飛び出してきた。きっと、いきなり名前が出て軽くパニックになったのだろう──最後のあたりで我に返ったようで、恥ずかしそうに「すごかった」と締めくくっていた。


 こういった詳しい感想をもらえると、すごく目を凝らして観てくれていたのが伝わってきて嬉しくなる。


 それに分かっているじゃないか、やっぱり魔法剣は炎だよな! 心の中でうんうん、と頷く。


 集まってきた子どもたちに「ありがとう」とか「頑張ってね」とか声をかけていると、シスターがやってくる。


「コルネ、どの魔法剣もとっても綺麗だったよ。最後の炎の魔法剣は昔見たロンド様みたいだったねぇ。きっと、たくさん頑張ったのねぇ」


 これ以上ない褒め言葉をシスターからもらって、とても嬉しくなる。シスターがそう言うのなら──少しずつかもしれないけど、俺は師匠に近づけているんだろう。

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