第115話 冒険者ギルド
マリーと別れ、しばらく歩くと冒険者ギルドが見えてくる。
マリーのパン屋と孤児院は近く、孤児院に先に行ってから冒険者ギルドに行く方が効率はいいのだが、今はまだ昼間で村の子どもたちが孤児院にいるから後に回したのだ。
孤児院は俺のような身寄りのない子どもたちを育てるだけでなく、村の子どもたちに読み書きも教えている。
孤児院で暮らしていない子どもたちは、朝に孤児院に来て昼過ぎに家へ帰っていく。だから、行くならシスターが忙しい昼過ぎまでの時間帯は避けた方がいいだろう。
冒険者ギルドの扉を開け中に入ると、俺がいたころと同じようにガラガラで少し安心した。ミャクー村には専業の冒険者はほとんどおらず、仕事の合間にクエストを受けに来る人が多い。
「おや、もしかしてちびっこパーティのコルネくんじゃないかい?」
俺を見つけて声を掛けてきたのは受付嬢のベティさん。俺たちがパーティを組んでからずっと受付を担当している頼りがいのあるお姉さんだ。
「はい、お久しぶりです。ベティさん」
「パーティが解散して一年くらいだっけ? ただでさえ寂れてるギルドがもうすっからかんになりそうだよ。どうだい? 元気にしてるかい?」
「はい、それなりに元気でやってます」
他愛のない会話を交わしていたが、ここにきた目的の一つを思い出す。
「マリーとエミルがパーティを抜けた後、ジャンはどうなりました?」
「あー、しばらく一人だけパーティに残ってメンバーの募集を続けてたんだけど、お金がなくなって領主様に引き戻されてた」
面倒臭そうに後ろ手で背中を掻きながら答えるベティさん。新しく冒険者になった人は全員パーティをすでに組んでいたから、メンバーの募集で集まるはずもない。俺の想像と同じような結末だったらしい。
「それよりヴィレアのギルドでモンスターを狩りまくったってのは本当かい?」
「────!」
ベティさんの口から思いもしない言葉が飛び出し、言葉に詰まってしまう。村の人は知らなくても、冒険者ギルド同士のつながりがあるならベティさんは知っていてもおかしくない。
「その反応は図星ってことだね? あたしは黙っとくからさ。まあせいぜい頑張りな!」
そう言って豪快に笑うベティさんであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます