第114話 マリーとの再会 其の二

「──でレオンさんのところから帰ってきて今に至るって感じかな」

「そっか、私がずっとここにいる間に色んなことがあったんだね……さらっと流してたけど、アドレアに会ったって言ってなかった?」


 そうか、アルノ兄さんに会ったのは魔法学校に行く前だったから、アドレアのことは聞いてないんだった。


「あ……まだ言ってなかったけどアドレアに会ったよ」


 ばつが悪く、目線を逸らしながら答える。


「アドレアがあの名門のアクスウィル魔法学校に行ってるとはね……大胆なことをするもんだわ。それで、アドレアはどうだった? 楽しそうだった?」

「たぶんだけど、楽しんでるみたいだったよ。それとたしか特待生だって言ってた」


 特待生と聞いてマリーは目を見開く。


「名門の、それも特待生だなんて……! コルネはよく分かってないみたいだけど、これはすごいことなんだから! アクスウィルの特待生なら王国魔法師団のエリートコースまっしぐらよ」

「そ、そうなんだ……」


 興奮してまくしたてるマリーの語気に気圧されてしまう。王国魔法師団は魔法使いなら誰もが羨む、王国直属の師団だ。狭き門と噂で聞くその王国魔法師団にまっしぐらというのなら、それは相当すごいことなのだろう。


 アドレアから聞いたときは、アクスウィルの中でも優れているということでただすごいとは思っていたが、マリーから聞いた話でそのすごさが現実味を帯びてきて今分かった。


 あのときアドレアも「あれ、反応うすいな……」と思っていたのだろうか。次会ったら、もっと褒め称えなければ。


「アドレアも元気にしてるみたいでよかった。あとはエミルね……今頃何をしてるんだか」

「マリーが知らないってことはミャクー村にはいないってこと?」

「たぶんだけどね。ほら、誰か帰ってきたりとか何かあったりするとすぐ噂になるじゃない? エミルの噂を聞かないってことは、たぶんいないってことよ」


 たしかにミャクー村にいる人は全員が顔見知りで、些細なことでもすぐ噂になって広まってしまう。噂が一切流れないということは、村にはいないと考えていいだろう。


 俺がパーティを離れたときにまだ一緒に残っていたマリーなら、何か知ってるかとも思ったが、そんなことはなかったようだ。


「じゃ、俺はそろそろおいとましますか。店番してるのに長話してごめん」

「いいよ、別に誰も来やしないんだし。何ならもっといてくれてもいいのに」

「他にも行きたいところあるからさ。また何かあったら来るから」


 そう言って少し名残惜しそうなマリーを残し、パン屋を後にする。買っておいたパンにかぶりつくと、懐かしい味がした。

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