第110話 懐かしい顔 其の二

「──というわけなんだ」


 アルノさんからなぜパーティが解散してしまったのか、そしてなぜアルノさんがここにいるのかを聞いた私は、いたたまれない気持ちになった。


 ずっと孤児院から一緒に過ごしてきたパーティメンバーは、きっともう家族のようなものだったのだろう。


 しかもその死に、アルノさんは少なからず自分に責任があると思っているようだ。詳しいことは分からないから何とも言えないけど、もしかすると必要以上に責任を感じすぎなんじゃないかと思った。


 でもそれをアルノさんに伝えるのは──無責任だと言われる気がして、出来なかった。


 話を聞いていて、冒険者をしていた頃を思い出した。きっとみんなどこかで冒険者を続けてるんだろう。パン屋の手伝いをしているのなんて私くらいのものだ。


 でも、もしそうだとしたらアルノさんのパーティみたいに、討伐クエストに失敗して──嫌な光景が頭をよぎる。ダメ、そんなことを考えちゃ。


 村に戻ってこないのだって、きっと、そうきっと、どこかで楽しく過ごしているからだ。楽しすぎてこの村のことなんて忘れているんだ、そうに決まってる。


「あ、そういえばここに戻ってくる前にコルネに会ったよ」

「え!?」


 私の思考が読まれているのかのようなタイミングでコルネの話が出てきて、狼狽してしまう。自分でもびっくりするほどの大きな声が出てしまい、アルノさんの肩がビクリと跳ねる。


「ラムハの街でSランク冒険者のロンドに弟子入りしたみたいだよ。君や他のパーティメンバーのことを気にかけてたから、時間があったら会いに行ってみるといいんじゃないかな」


 Sランク冒険者に弟子入りとは驚いたけど、やはり冒険者は続けているみたいだ。あんな想像をしてしまった後だから、生きていると分かっただけで嬉しい。


「ありがとうございます。コルネは私以外のパーティメンバーがどこにいるかは知ってました?」

「誰も知らないみたいだった。君は知ってるのかい?」

「いえ、私も誰も知りません」


 やはり知らないか……みんな無事だといいな。コルネがSランク冒険者に弟子入りかあ──なんだか遠くに行っちゃったみたい。いや、ラムハだからそんなに遠くはないんだけどそういうことじゃなくて。


 自分にツッコミを入れているとアルノさんが何かに気付いたようにハッとする。


「お店に長居しちゃって悪いね、じゃあ回復魔法の件は手紙出してみるから、返ってきたらまた連絡するね」

「お願いします」


 そう言って買ったパンを抱えてそそくさと出て行ってしまうアルノさん。


 ラムハかぁ……行ってみようかな。

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