第6話 部活動

「我が手に集まれ熱き炎・・・」


「えっ・・・」

詠唱?するの?



「マリア、魔法、詠唱、いるの?」


「なんでカタコトなんですか・・・詠唱は基本ではないですか」

・・・知らなかった。


「・・・砂の嵐〈サンドストーム〉!」


「暴虐の風よ・・・」「荒れ狂う水・・・」


(詠唱・・・しなくても魔法発動できるんだけどなぁ)

そんなことを思っていると、




「最後、キャッスルフォルト!」

順番が回ってきた。





(何にしよう・・・)



腕を組み、ひたすら悩む。


「・・・??どうした?」


「いや、なんでもないです・・・」



よし、あれで。




両手を左右に広げ、魔力を集める。


「「「「「「「「「「「「??????」」」」」」」」」」」」

先生、クラスメートは不思議がっている。



「まさか・・・」

マリアがぼそっとつぶやく




その間に魔力を集め終わり胸の前で手を合わせ、手を前に広げ<火・魔・法・>を放つ。


青白く燃え上がる業火が的に直撃し、周囲を粉砕。

訓練場の壁も大破。



「・・・あれ?」

・・・割と魔力抑え目にしたのに、ナニコレやりすぎた!?




「「「「「「「「「「「「はぁぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?」」」」」」」」」」」」

クラスメートも狼狽している。

・・・俺もさすがに狼狽えてはいる。



「・・・アード?」



「え?は?はい?なに・・・!?」



「今の魔法って・・・?」



「いや、普通の火属性の魔法なんだけど・・・なんかすごい威力になった・・・」



「そうじゃなくて、詠唱は・・・?」



「魔法を撃つのにしっかり魔力の制御ができないといけないって本に書いて、ずっと練習してたから詠唱ってしたことなくて・・・」


マリアが呆然としている。

みんなも呆然としている。




俺、やっちゃった!?







「訓練場があんな感じになったから、剣術は今度見せてもらう。それから、キャッスルフォルト。・・・魔法を放つ時は、事前にどんなことするか教えてくれないか?」



「・・・はい」


完全にやらかした感が半端ない・・・



「じゃあ、今日はこれでおしまいだ。明日は校内を案内して、部活動の紹介をするからな。遅刻はするなよ~」



「「「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」」」




(はぁ、やっぱり神託が関係してるのかな・・・)

家に帰って頭を悩ませるのであった。




*   *   *



王城


「お父様、お話したいことが。」



「どうしたのだ、マリア」


「はい、アード・・・アーマルド・グレース・キャッスルフォルト様のことで」


「入学式の後に何かあったのであるか?」


「そうなんです!実は・・・」

訓練場での出来事を、



「なんと!そんなにか!?」


「はい、彼なら私が冒険者になった後も・・・」


「世界でこれ以上ない護衛になる・・・であるか」


「まさに、その通りです。さらに、世界に2人しかいないSランク冒険者の上、伝説のS・S・ラ・ン・ク・になれるかと思っておりますの。来週にギルドへご一緒する予定になっておりますので、早速距離を詰めていきたいと思います!」


「ず・・随分と冒険者事情に詳しいのだな・・・まぁ彼が冒険者として大成すれば、王城に招く良い口実になる。共に励むのだぞ。」



「わかりましたわ、お父様!」

マリアがフンフンしながら意気込んだ。




*   *   *




翌日



「みんなおはよう。今日は校内の案内をして、部活動紹介だ。案内しながら部活も紹介してくからな!おそらく午前で終わるとは思うが、終わったあとすぐ帰宅せず、別の訓練場で自習をしても構わないし、みんなで交流を深める何かをしてもいい。ただし、キャッスルフォルト・・・訓練場では・・・」



「わかってます、控えます・・・」



「さすがに王国管理の施設と違い、障壁を張ってないからな・・・くれぐれも「注意します・・・」・・・頼んだぞ」

(早速目を付けられた!?)





校内の案内に合わせてぞろぞろ移動する。

校内の施設は、授業を受けるメイン校舎と、職員棟、部活棟、訓練棟の4つに分かれている。

訓練棟は魔法訓練場が大中小の3棟、剣術道場も同じ仕様で3棟、

両方行えるように建てられた総合訓練場が大中小各2つずつの合計6棟。

・・・ちなみに破壊されたのは、総合訓練場の小の1つである。ごめんなさい。



そして部活。




部活も色々。正直中等学院でやる内容とは思えない部活が圧倒的に多い。

・・・なんでも、高等学院に入学した後にも専門的に学べるように、



王立魔法高等学院・騎士学院・経営学院・区立高等学院に存在する

部活動と同じものなんだとか。



この世界の12~15歳はしっかり将来を見据えているなあ。

神託も関係してるのか・・・?



「ねぇねぇ、キャッスルフォルト君。君はどんな部活動に入るの?」

元気娘、リーンに聞かれる。



「アードでいいよ。そうだなぁ・・・正直、魅力を感じる部活がないというかなんというか・・・」



「確かに、昨日の魔法を見ちゃうと、アード君にはあまり気を引く部活がないかもねぇ」

なんて、チャラ男のルイス。



「アード、自身で立ち上げてみては?魔剣術研究会・・・みたいな。」



「おっ面白そうだな、キャッスルフォルト、やってみるか!」

なぜ先生が乗り気なんだ?



「興味ある~」「入れてもらえるかな」「俺も俺も!入る!」



「別に家督を継ぐわけじゃないし、冒険者・・・あり・・・」

みんなわりと前向き。

(いやだって言いにくい・・・・)



「もし、部活だけの活動なら5人と顧問が必要だが、クラス全員冒険者目指すなら、このクラスだけの部活動なんてちょうどいいとは思うぞ」

先生すら前向きなのに、ここで俺だけが否定はになるのはよくないか。



「じゃあ、来週の授業までに冒険者登録を済ませよう・・・」



仕方なしに提案する。


「「「「「「「「「「「賛成!!」」」」」」」」」」」

・・・まとまってるなぁ、このクラス・・・




部活動紹介は何事もなく終わった。

いや、何事もなかったことはなかったけど・・・



訓練場の一件をどこで聞いたのか、勧誘がすごかった・・・

魔法研究の部活は興味あったけど、自分たちで研究したかったから、あきらめた。




教室に戻って



「アード、明日にでも早速冒険者ギルドヘ一緒に行きません?」



「ん?いいよ。何時に集合しようか?」



「そしたら、9時頃に東部中央広場の噴水前なんていかがです?」



「わかった、その時間なら冒険者ギルドも空いてると思うしいいと思う。」



「では、また明日♪」

・・・小さくガッツポーズしてたな、マリア。



みんなも、「明日~」「いや、明後日に~」など、計画しているようだった。

まあ、みんなで行く必要はないし、分散していた方がスムーズだな。



「今日はこれで終わりだ。気を付けて登録して来いよ!」

と、先生。



「あっそうだ」



「そうしたんですか?」



「学生冒険者には奴隷購入が義務付けられてるの言い忘れてた。」

(へぇ、奴隷かぁ。しかも義務なのか・・・奴隷を連れてるのってあんま良い印象じゃないんだけどなぁ)



みんな・・・特に平民出身のユージン・シェリー・ロキ・ベル・リーンは

顔を見合わせている。



「まぁそう怪訝な顔をするな。学生の生存率を下げないようにするための義務なんだ」



確かに、学生で冒険者登録をすると、日中は勉強して隙間時間で冒険者をすることになる。

学校に行かない12歳は、年齢の高いランクの冒険者チームに入れてもらったり、

ギルドの練習場で訓練を受けたりできるので、

実戦経験がどうしても学生の方が少なくなるので、

ダンジョンやクエストでの生存率がどうしても学生の方が低くなる。

そうしたことの対策なのであろう。



「学校から金貨10枚までの奴隷なら支援金が出るから、請求先を学校に指定して、好きな奴隷を購入するといい。丁度いい。付き添いで俺が一緒に行ってやるから、今から奴隷商館に行くか?」



「あの、私も購入しないといけないのでしょうか・・・?」


おずおずとマリアが手を挙げる。



「マルネリア殿下は王女という立場なので、もし冒険者をするなら購入した方が良いでしょう。中等学校には護衛もいないし、学生だけのチームになりますから。」



「そうですね・・・わかりました」



「ちなみに、支援金制度を利用する場合は、中等学園在学中の3年しか奴隷の保有をできない契約になるから注意が必要だ。」



「支援金制度を利用いない場合は・・・?」



貴族組であるロイドが実費で購入しても良いのか?というような勢いで尋ねる。



「その場合は、保有期間の制限は設けられない。手放したり、奴隷が死なない限りは自分のものになる。ただし、自己所有奴隷に関しては、保有年数に応じて税金もあるし、奴隷保有に関する規約もあるからその辺も注意しながら選ぶといい。」



(貴族組は実家から奴隷購入のお金も貰えるだろうから、俺も自己所有で考えようかな・・・)



奴隷に対して多少の抵抗感があるものの、自己所有の方向で検討しよう。


あっ・・そうだ・・・


「先生、チーム全員が奴隷を所有する場合、ギルドの規則に何らかの影響が出るんじゃないですか?」



「奴隷は冒険者扱いにならないから問題ない。学生の購入する奴隷は基本的に支援金を利用して購入するケースが多いから、学校所有になる。いわば、貸出レンタル奴隷扱いだな」



なるほどな。



「自己所有で、奴隷に冒険者登録をさせた場合は・・・?」



「たしか、その場合は奴隷はチーム人数にカウントされる・・・と思う。冒険者登録させると、もし売却するときに高値が付くとか、連携をとることがすぐにできるとかなんとか・・・」


あいまいだなぁ、先生。



その辺はギルドで聞いてみよう。



「質問もなさそうであれば、支援金制度利用に関する申込書を配布する。希望者は取りに来てくれ」



「アード」



「どうしたマリア?」



「奴隷はどういうタイプの人を選びます?」



「どうしようかな・・・マリアとチームを組む時に、もし回復が追い付かなくなった時のために回復役を選んでもいいかなって思ってるよ。ソロでクエストを受けるかもしれないし、安全マージンを確保したいし。」



「私も回復が得意な方にします。回復が得意な<聖女>とはいえ、攻撃ができないといけませんから・・・回復もできて、一緒に戦える方を自己所有で購入します。」



「俺も自己所有かな。今後も冒険者を続けるなら、自己所有の方が何かと都合がよさそうだしね。」



「よーし、申込書の記入も終わったし、15分後に出発するぞ!準備ができた者から校門で待機してろ!」



「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」


人生初の奴隷商館・・・

ドキドキするな~~~


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