44話「気まずかった!」




「あー、気まずかった!」


 キャンプを終えて家に帰ってきた僕は、そう愚痴を言いながらソファーに飛び込む。

 帰りの車内、告白をした寧々さんと返事を保留にした小野の間に流れる空気があまりにも重苦しくて、僕もくるみもかなり精神を消耗した。


「わかるー」

「……くるみはなんで自分の家に帰らず僕の家に来てるのかな?」

「なんか消化不良な感じでキャンプ終わったからお泊まり会しようかと思って」

「一回家に帰ってから来なよ……」

「えー、だるい」

「水着とか濡れたまま放置すると臭いすごくなるよ?」

「……仕方ない。綾人に嗅がせるか」

「そうはならんだろ。いいから一回帰ってから来る!」

「仕方ないなぁ」


 くるみは不服そうにしながらも、荷物を持って家に帰る。

 それを見送ってから、バッグを開けて洗濯物を洗濯機にぶち込んで洗剤を入れて起動。

 まだ12時前なので今から洗濯しても乾くだろう。夏だし、天気もいいし。



◆ ◇ ◆



 一度家に戻ってから再び家に来たくるみと昼食をとった後、僕たちはキャンプの二次会としてはしゃいでいた──わけではなく、お互いにスマホで別のことをしながらただぼんやりとしていた。

 最初はゲームをしていたのだが、お互いに思いの外疲れていたこともあって今に至る。

 SNSを見て、面白そうなものを見つけたらそれをくるみに見せる。向こうも何か面白いことがあったら僕に見せる。いつも通りそんなふうに過ごしていた。

 すると、メッセージアプリの通知が届く。

 内容を確認すると、それは小野からのもので『付き合うことになったわ』というだけのものだった。

 同時にくるみの方にもメッセージが来たようで、僕の肩を叩いてスマホの画面を見せてくる。


「なんかめっちゃ興奮したメッセージ送られてきたんだけど」

「まぁ、無事付き合えたわけだしはしゃぎたくもなるんじゃない?」


 喜びの言葉が絶え間なく送られてくるくるみは(というか、女子のグループがありそこに送られてきているらしい)、手早く返信をする。

 僕も『そっか。今度祝いにパイ顔に投げるから覚悟してね』と送った。


「保留にされたって聞いてたからら寧々ちゃん振られるのかと思ったけど、付き合ったんだね」

「僕は付き合うとは思ってたけど、早くてよかった。もだもだしたまま夏休み終わるかもとか思ってたからさ」

「付き合うと思ってたの?」

「昨日小野から話聞いた感じ、寧々さんへの好感度は高かったみたいだし断らなそうだなって。あいつチキンだから返事するのはもっと後かと思ってたけどね」

「そう思ってたなら早く言ってよ。わたし結構そわそわしてたんだけど」

「ほら、断るかもしれなかったし、どうせしばらくすれば結果はわかるわけだから、不確定なこと言うこともないかなって。あと、重いから僕に体重かけるのやめて」

「むぅ……」


 くるみは不承不承といった様子で僕から離れると、体勢を変えて僕の膝の上に自分の頭を置く。


「何?」

「なんでもなーい」


 くるみはそう言うと、またスマホを見始める。

 とりあえず、なんの気無しにくるみの頭を撫でた後、僕もスマホを見る作業に戻る。

 やはりくるみのすることはよくわからない。

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