〈11〉
すっかりじゃがいもにハマった僕は、主食がじゃがいもになるほどで、
おかずもじゃがいもだった。
特にふかし芋で肉じゃがを食べるのが最高である。
あの水分が足りないようでギリギリ足りている感じが何とも言えないのだ。
しかしじゃがいもを洗うことが面倒になってしまった。
ここでじゃがいも好きなら泥つきで食べる努力をすべきだが、僕にそんな忍耐はない。
「なんで土に埋まってたんだよ!」
そう言ってじゃがいもをぶちまけた。
すでに箱買いするようになっていた僕は十五キロものじゃがいもを所持している。
それらが一斉に転がり、床がいもと共に土でまみれた。
乾いた土は扱いやすそうにみえて意外と掃除が大変だ。
こんなとき彼女のシンプルさが身に染みる。
彼女は突飛なことがないぶん、決して迷惑なる要素もなかった。
彼女のことをまた思い出して、比較している自分が嫌になる。元カレ気取りも大概にしろよクズ。
めんどうだと思う反面、じゃがいもを手放そうとは思わなかった。
それは彼女から学んだからかもしれない。
僕はじゃがいもを一つ一つ拾った。
ごめん、ジャガコ、ジャガオ、ジャガスティン……ジャガミ?!
ジャガミから芽が出ていた。
別にこのじゃがいもがジャガミという名前ではないけれど、即興で名前を付けたくなるほど僕はじゃがいもに真剣なのだ。
ジャガミから出た芽は、わりと成長していて、気持ち悪いけどつい見てしまうレベルにまでなっている。
これは早急に調理しなくては。僕はジャガミとそこら辺のじゃがいもをテキトーに掴んで洗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます