十九人の殉教者

 自室の天井からロープを垂らしたところで、窓の外から自分の姿が見えないか心配になった。

 窓にカーテンはなかったが、すりガラスなので今まで気にならなかった。

 しかし、外からシルエットくらいはわかるかもしれない。

 まだ生きているうちに見つかるとやっかいなので、何かでふさごうとしたところ、部屋の障子を外して横にすると具合がよかった。


 障子から透ける日の光に包まれながらロープを眺めていると、障子の格子が十字架に見えた。

 縦に三列、横に六列。

 計十八個の十字架が私の前に浮かんでいた。


 その場景を見つめながら、隠れキリシタンの人々はわざわざ仏像に模したマリア像を拝む必要はなく、障子を拝んでいれば安全だったのにと思ったが、かの宗教は自殺を認めていないので、私につまらないことを言われる筋合いはなかった。


 では、この目の前の十字架の群れは何であろうか?

 教義に背き自殺した十八人のキリスト教徒を私は連想した。

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