落日
夕日に染められてジャングルのすべてのものが本来の色彩を失っている中、大河の水が静かに海へ向かっていた。
大河の真ん中では巨大なカメがゆっくりと河口を目指して泳いでおり、その甲羅に括り付けられた椅子に私は坐っていた。
大河の先に海があるはずだが、まだ見えなかった。
大きな夕日が目に映るばかりだった。
両側の密林からは、時おり、遠くから鳥の鳴き声がするくらいで、実に静かなものだった。
木のうえにいる鳥や猿たちが、じっとこちらを見つめていた。
木々の間からは原住民の姿も見えていたが、身につけている仮面のせいで、その表情はわからずじまいであった。
彼らに見送られながら、私はこのジャングルを去る。
これは何かの始まりであろうか。
それとも、何かの終わりであろうか。
水の流れる音だけが聞こえた。
椅子にもたれながら巨大な夕日を眺めていたら、祖父から聞いた昔話を、ふと思い出した。
ある時、赤茶けた
彼らは様々な塗料で肌を塗りたくり、色とりどりの羽で着飾っていた。
二つの部族はそれぞれの神にいけにえを捧げ終えると、長い長い踊りをはじめた。
そして、儀式が終わると、二つの部族は相手に向けて矢を放ち、槍を投げはじめた。
やがて矢と槍が尽きると、二つの部族は刀を抜いて、その距離を縮めた。
戦いは長く続き、なかなか決着が見えなかった。
太陽も傾きはじめ、その色も黄金から赤色へ変じた。
大きな夕日が真横から、戦士たちを照らした。
戦いが続く中、戦士の一人が異変に気づいて夕日を指をさすと、みなが指の先に目を向けた。
真っ赤な夕日を背景に、黒い物体が徐々に大きくなりながら、戦士たちに近づいていた。
あれは何であろうと注視する戦士たちの瞳に、その正体が映った。
赤い赤い夕日を背に、戦士たちへ近づいていたのは、黒い肌をした巨人であった。
気づいた者から、戦士たちは逃げ始めた。
しかし、巨人は逃げ惑う戦士たちを叩き、握り、踏んだ。
逃げ延びた戦士たちの姿が見えなくなると、巨人はしばらく佇んだのち、夕日に向かって去って行った。
広野に、無数の潰れた死体が残った。
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