エジプトニジカンムリドリ

 五十数年も会っていない、おさななじみの女性から手紙がとどいた。

 自宅に招きたいとの内容だったので出向いた。

 同封されていた手書きの地図を頼りに。


 住宅街の中を迷ったすえに、みすぼらしい家にたどりついた。

 おさななじみの亡くなった夫は有名な作家で、いまでもそれなりの印税を彼女にもたらしていると聞いていた。

 また、おさななじみ自身も優れた翻訳家として名を成していた。


 彼女の経歴にそぐわない家のチャイムを鳴らすと、三十代前半と思われる女がドアを開けて家の中へいざなった。

 おさななじみの娘かと思ったが、彼女に子はなかったと雑誌に書いてあったので、親戚であろうか?

 私はダイニングルームに通された。


 女の白い手で示されたイスに坐ろうとした時、奇妙な生き物が視界に入ってきた。

 鳥なのだろうが、やけに首が長く、脚は短かった。

 とても飛べそうにはなかった。

 頭からはさまざまな色をした細長いものが出ており、きれいといえばきれいであったが、毛ではないようだった。


 女が鳥の首に手をそえた。

「これを手に入れるために、前の家も宝石も売ってしまったわ」

 口ぶりから目の前の女がおさななじみなのかもしれないと思ったが、見た目と年齢がまったく合わないし、昔のおもかげもなかったので判断に迷った。


 どう声をかけたものかと悩んでいると、背後からかわいらしい声がした。

 振り返るとネコと人の赤ん坊を混ぜたようなものが床を歩いていた。

「かわいいネコでしょう?」

と女が言った。

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