第19話 謎解きの依頼
メール着信音が鳴った。
「窓口役温羅者からだ。謎解きの依頼が入った」
弘は受信したメールを読み取り、報告していく。
「海外からの依頼で、ペットの変異の謎解きだ。犯行声明はまだない。変異が起こったペットの種類は様々で、それらの共通点は見当たらない。起こった変異とは、被毛のあるペットは全ての毛が抜け落ち、露わになった皮膚は全て、緑色に染まった。緑色に染まった皮膚細胞を調べた結果、葉緑体を検出。また、未知のタンパク質を多数検出。それらタンパク質の作用で、ペットは急激な変異を起こしたとみられる。だが、一匹も死亡していないし、性質も変わっておらず、健康は良好。有害なウイルスや細菌など、病原体は検出されておらず、感染の痕跡もなく、完璧に適応し、ペットフードなどの食べ物は一切食べない」
「未知のタンパク質」
この単語で、幸は直感する。
「同一犯の可能性が高い。この謎解き、受けると返信して」
「了解」
弘はすぐに取り掛かった。
「代謝経路が変わった?」
首を捻る幸は、情報が欲しいと言わんばかりに言った。
「詳細はまだ不明だが、光合成でエネルギーを得ている。だが、心臓も肺も動いていて、動物とも植物とも言えない新しい生物になっている」
つけ加えた弘の報告を、幸は頭脳のアルゴリズムに加えた。
「この変異は、ほんの数分以内で起こっている。遺伝子組み換えでも、こんな短時間で変異は起こせない。また、人類の進化から考えると、この進化はナノ秒だ」
皮肉っぽく言った弘が、幸を見遣った。腕組みをしてソファにもたれている幸は、目を合わせることなく考え込んでいる。
「検出された未知のタンパク質は分析中なの?」
幸が尋ねた。
「ああ」
この返答で、幸が弘と目を合わせた。
「だったら、その研究所と連携して謎解きを進めたい」
「了解。段取り役温羅者に依頼する」
弘が付け足す。
「情報役温羅者にも、この件に関する詳細な情報収集を依頼する」
的確な弘に、幸は満足そうに口元をほころばせた。
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