第10話 情報
左太ももに巻いているバイテク蔓草から伸びた蔓の先端が二股になり、幸の左耳と口元で小さな葉をつけた。弘からの通話だ。
「幸。検体の検査結果だが、枯れた植物からも、その土壌からも、化合物が検出されている。これらの化合物は同じだ。そして、これらと、パイロット二人の遺体から検出された化合物は、同じだ」
弘の報告に、幸は満足そうな笑みを浮かべた。
「すべて同じ化合物なら、貨物機内の化合物が外に出たという証拠になる。貨物機が到着した後に、植物が枯れているのだから」
「ってことは、感染源が貨物機内にあるということか?」
「たぶんコンテナの中にあった荷物の六曲屏風よ」
幸は確信をもって回答はしなかった。推測の域を出ないからだ。
「今、貨物室で発見した塵の分析結果が届いた」
思わず上擦った声をあげた弘が、沈黙した。読み取っている。
「塵は、植物の残骸だ」
弘が報告するや否や、幸は指示を出す。
「その残骸をもっと……」
「分析中だ」
指示を遮って返した弘に、幸はにんまりとした。
「塵からも、同じ化合物が存在すれば……」
幸の頭脳で新たな仮説が組み立てられていく。
「分析を待つ」
ぽつりと言った幸は、蔓を引きちぎって通話を切った。
丸くなって居眠りをしていた兎兎が、幸の動向を察して顔をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます