神の旅
@sirotubakii
プロローグ
「容姿はこんな感じがいいかな」
眩しい程に白い柱が均等に並び、透明な空気が澄み渡った神殿に神ルドベキアは何やら楽しそうに独り言を話していた。
「白にしろよ!つって」
面白くもない独り言を呟きながら、大きな鏡の前で自分の姿を眺める。
その姿は神ルドベキアの姿ではなく、人間の少年だった。
「楽しみだなぁ!どんな世界なのだろうか」
俺はこの世界の神だ。
神といっても、世界に干渉はせずただ存在するだけ。
すなわち、世界の行く末を見届けるだけである。
神は普通、世界に全く干渉しないどころか、他の世界の神たちと無限の時間をただ潰してきていただけだった。中には、世界の状況を鑑賞している者もいたが。
だが、世界の行く末がどうなろうがあまり興味などなかった。
しかし、神ルドベキアは世界への興味をとてつもなく持っていた。
要因となったのは、世界に生きている者たちが魔法を行使していたからだ。
世界の者たちが魔法を行使していると気づくまでは、他の世界の神と遊んでいるだけの他の神たちと何ら変わらなかった。
魔法とはとても美しいものだ。魔法は使い方次第で、何でもできるのだ。
眺めているだけではつまらない。ゆえに世界に自ら人間として降り立つ決断をする。
彼が人間の姿で独り言を呟きながら鏡の前に立っているのは、人間として降り立つ容姿を考え創作しているのである。
「まぁ、こんなものだろ」
鏡の前で髪をいじりながら、人間の姿を眺める。
金瞳に透き通った白い髪の毛。
顔のパーツもさすが神が創った人間の顔という目鼻立ちもはっきりとしていて端麗である。神には性別の概念はない。なので、男性的というより中性的という表現が適切な美しい顔立ちだった。
「これで決まりっと」
鏡の前から離れ神殿をぐるりと見渡す。
純白の何も無い場所。この場所は退屈だった。
それに比べて、人の住む世界は陸、海、空、場所によって様々な地形があり、暮らしている人も様々な種に分かれている。
「なんて楽しそうな場所なんだ」
考えただけでわくわくして呟いてしまう。
それに、この世界には魔法が行使されている。魔法の無い世界も別世界にはあり、ルドベキアは魔法の美しさに心酔していたため、自分の担当が魔法の行使されている世界で心底良かったと感じている。
神としての仕事もここには特に無い。見守るだけだ。今更考えると、つまらなすぎるだろう。なら、自分で世界を体験するのはどうだろうか。ふと頭に浮かんだ考えだった。そこからの決断は早かった。
世界を旅して、自分の目で世界を見る。それが今回世界ですることだ。
明確なするべき事を決めているわけではなく、旅がしたい。神は気まぐれなのだ。
どれくらいの期間世界に居るかも特に決めていない。満足するまで居るつもりだ。
右手を地面に描かれた魔法陣に添える。
「世界転移」
神殿の魔法陣の上のルドベキアを中心に眩しい光が溢れ出す。
純白の世界が魔法陣の光に包まれる。
光の輝きが消えた時には、神の姿も魔法陣も消えていた。
神の旅 @sirotubakii
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