第3話 もう恋なんてしない

「もう恋なんてしない!」

「何、またフラれたの?」

「……フラれてない。フラれてないけど……奥さんがいた」

「ああそれはそれは……。そういうのはアンナにはオススメしないからまぁいいんじゃないの? いい諦めるきっかけになって」

「だって、まだ始まってさえいなかったのに……」

「アンナ、良く考えな。あんたがもし知らずにその男とやっちゃって、現場の写真でも撮られた日には200万よ、200万。そんなお金ないでしょ?」

「……に、200万!? ないっないっ……ありません!」

「でしょう? だからまぁよっぽど器用じゃないならやんない方がいいんだって不倫なんて」

「はぁ……そっか。いい人だったんだけどな」

「――アンナはさー、例えばそこに10人男が居るとしたら何人くらいは付き合ってもいいなぁって思えると思う? 若すぎるとか年寄すぎるのは除いてもいいけど、あとは完全にランダムにね。オタクとかブサイクとかそういうのも居るとして」

「えー何それ、そんなのわかんないよ」

「じゃあさ、高校のクラスで考えてみな。男子何人いた?」

「……20人くらい?」

「じゃその中で、付き合ってもいいって思える男子は何人?」

「えーそんなのほとんどいないよ。高校の男子サイアクだったもん」

「その中であえて言えば?」

「うーん。2,3人くらい?」

「お、いい数字。10人に一人くらいは付き合ってもいいかなーって思う人が居たわけよね。――それきっと今も一緒なのよ。男10人いたら付き合ってもいいかなってのは一人くらいなんだって。もちろん向こう側もそうだし、今だと結婚している人も沢山いるから確率はもっと悪くなるけど……」

「…………それで?」

「つ・ま・り……簡単にはいい男は落ちてないけど、数うちゃ当たるってことよ」

「何それ。なんの励ましにもならないし……」

「でもほらアキコ、彼氏できたらしいよ」

「なんで! どうして! どこで!」

「落ち着いて。マッチングアプリだってさ。だからほら、ようは数うちゃ当たるのよ」

「――やるっ! あたしもやるからマッチングアプリ! エリコも一緒にやろ!」

「いやあたし彼氏いるし」

「バレなきゃいいじゃん。大丈夫だよ」

「妻子持ちにショック受けてたの誰よ」

「固いこと言わないでさ、登録だけでも……」

「さっきまで『もう恋なんてしない』って言ってたくせに調子いいんだから……」

「もう言いませんから! 絶対に!」

「――続けて言うと?」

「――続けて?」

「もう恋なんてしないなんて~……」

「――言わないよ絶対っ!」

「じゃカラオケでも行こっか」

「いくいく~~」

「アンナ、マッキー縛りね」

「それはいや~」

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