第92話 寵愛の機械
ローマ帝国 ローマ
紅(くれない)、Mia(ミア)、Stella(ステラ)の3人の名前がわかったので、アリッシアの家族を紹介してもらうことにした。
アレッシアの家族は、彼女の両親と年上の兄が居るとのことだった。
彼女の父と兄がまだ帰って来ておらず、アレッシアは食事の手伝いをすると言い、俺には彼女達と話していてと言われた。
手伝うと言ったが、客人にはそんなことさせないと言われたので俺は3体のロボット娘と話すことにした。
しばらくして、アレッシアの父と兄が帰って来たので…服を着替えようとしたのだが…。
「ご主人様、お手伝いしましょうか?」
「いやっ…大丈夫。」
「そんなことおっしゃらずに…。」
「…それじゃあ、脱いだ服を頼むよ。」
「わかりました。」
「…ところで、紅とミアはどこを見てるんだ。」
「主殿の男性器でございます。」
「心配ございません…特にそういった意味ではございません。」
「…本当に?」
「主殿の私は構いません。今からでも…。」
「手と口…どちらにしますご主人様?」
「…今はいい。」
「了解です。」
「お待ちしております。」
少し頭が痛くなった。
いやっ…まあ、男性ならうれしいけど。
そうじゃない…かな。
そんな感じで長袖のシャツとズボンに着替え、レベッカの下に向かおうとした時部屋がノックされた。
「はい、なんでしょうか?」
ステラがドアを開くとそこには、金髪で青い目で和メイド…和服に装飾をした感じの服の女性がそこに居た。
けれど、ステラはなぜか少し不服そうな顔をしていた。
「初めまして、昇(のぼる)様。本家の機械メイドのIrene(イレーネ)と申します。」
「ああ、どうも…。」
「夕飯の用意が出来ましたので、お越しください。案内します。」
「ありがとう…。」
「…あなた方もどうぞ。」
「はい。」
「それは、どうも…。」
「是非。」
階段を降りて、食堂の中に入った。
厳格というよりは、テレビがあり、テレビ台の下にはゲーム機が置かれていた。
有線式のコントローラーのようで、長方形の本体もあった。
テーブルクロスは敷かれておらず、普通の一般家庭のようなリビングとダイニングを兼ねているようで一番奥には暖炉…装飾用の火が映し出されるタイプのものだろうか、壁をくりぬかれたように設置されていた。
また、その上には風景画が飾られていた。
すでに、椅子にはアレッシアの父と兄が座っていた。
「どうぞ、こちらへ。」
「ああ、ありがとう。」
「彼女達をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫。」
「ありがとうございます。では、みなさんついてきてください。」
イレーネに続いて俺のメイド3人組は部屋を出た。
一番奥には、アレッシアの父が座り、彼から見て右の列に彼の妻、息子。
彼から見ての左の列にアレッシア、俺の順に座るのだろう…。
俺の右側の椅子は空いていた。
ほどなくして、アレッシアとアレッシアの母が食堂に入り席に座った。
イレーネとはまた別の銀髪緑眼の和メイドが居たようで
「…お兄ちゃん、昇さんと何か話しましたか?」
「いやっ…まだだ。」
「そうですか…。」
まるで、葬式のような雰囲気がしていたのを気にしたのかアリッシアはそう言った。
テーブルの上には、肉とエビの料理の他に大皿のパスタがあった。
「…では、食事にしよう。まずは私と家族の紹介をしよう。…初めまして、当主のArnoldo(アルノルド)・Marino(マリーノ)だ。妻のValentina(ヴァレンティーナ)、息子のLeonida(レオニダ)、そしてアレッシアと、メイドのイレーネ、Rosana(ロザナ)だ。あなたはネロ様の客人である為、私とその家族はあなたを向か入れる。従って、必要な物が何でも申してください。娘がご用命でしたら差し上げっ…こほんっ、頂戴差し上げます。」
「…。」
「初めまして、昇さん。アレッシアの母のヴァレンティーナです。ようこそ、当家へ。主人はネロ様からあなたを任されたことを大変に光栄に思っていて、スピーチの練習をしていたもので…誠に申し訳ございません。ネロ様の客人の前で言葉を読み間違える愚行を夫がしてしまい!」
「父さん!母さん!…申し訳ございません。、どうかお命だけは。」
「…いやっ、なんていうか…この家にお世話になるので今度ともよろしくお願いいたします。」
「アレッシア!あなたも!」
「誠に申し訳ございません。父も母も兄もこの通りですのでどうかお許しください。」
そういうと、アレッシアはわざわざ立ち上がって頭を下げてきた。
「許すから…それより、君の家族について教えてほしいかな。」
「はい、かしこまりました。」
「…それと、みんな普段の通りの話し方の方が気分が安らぐんだけど…。」
「申し訳ございません、とんだご無礼を…。何しろ、ネロ様直々の客人を向かい入れるということで大変緊張いたしておりまして…。」
「…そうですか。」
「はい、いや~…話には聞いていましたがお若いですね。」
「ええ、よく言われます。」
「昇さん、お兄ちゃんはローマ統合空軍の少尉なんですよ。」
「…そうだったんですか。」
「まだ、新米ですよ。」
「お父さんは研究者でロボットの研究をしていて、お母さんは元山岳猟兵(アルピーニ)で今は機械狼(ルーパス・マキナ)部隊の訓練の手伝いをしているんです。」
「…それは、凄い。…ルーパス・マキナって?」
「大丈夫です、ちゃんと見れますよ。」
「それじゃあ、食事にしようか…ロザナ、ワインを開けてくれる?」
「了解しました。」
「ロザナ、昇さんには注がないように…。」
「ええ…。」
「ダメです。」
「おっと、そうでしたか…。お酒に弱いんですか?」
「いえっ…禁煙禁酒するように言われてて…。」
なるほどっと、言いながらアレッシアの兄のレオニダはバレないように俺にウィンクしてきた。
おそらく、飲ませてやるという意味のウィンクだとは思う…。
たぶん、そう…。
「…まったく。」
そして、俺はテーブルに置かれていた料理を食べることにした。
そういえばと思い、ミア達の方を見ると普通に食事をしていた。
アレッシア達はそれを何事もないようにしていたが、俺は気になり少し彼女達を見ていた。
ロボットが食事をするのかというより、彼女達の動力源が何なのかが気になった。
ミアも、ステラも、紅も、ロザナも、イレーネも道具を使い食事をしていた。
夕食を食べ終え、ステラ達が片付けをしに台所に行った。
俺は、とりあえず部屋に戻ろうとした所アレッシアの父に呼び止められ、彼の書斎に入った。
彼の書斎は、本がたくさんあり、コピー機のような機械の他、パソコンのモニターとキーボードにマウスがあり、部屋のクラッシックな雰囲気と絶妙にそうした装置のモダンさが同居していた。
奥の仕事用の机の前にある対になっているソファーの右側に座り、テーブルを挟み反対側にアルノルドが座った。
「…ああ、そんな緊張しなくていい。ここは君の家のようなもの…いやっ、君の家だ。先ほどは失礼を…。」
「いいえ、気にしていませんよ。アルノルドさん。」
「なら、良かった。君を呼んだのはネロ様からあの娘達について学ばせる…といっても私が教えるわけではないのだが…この国では機械が労働力にも戦力にもなっているし、何より身近な存在だからね。」
「…そうなんですか?」
「ああ、まあ…ロザナ達はその中でもかなりこうして家庭での生活、人に近い存在でね。君の身体のパーツとも互換性があるんだ。」
「互換性ですか…そうは思えないのですが…。」
「ああ、失礼…君は確か戦闘中に両目と体の皮膚、四肢を失ったようでこの国の技術で直されたから無理もない。」
反射的に違うとは言いたいが、おそらくボナパルトさん達がそうアレッシアや、他の人に伝えていたのだろう。
目を失ったか、どうかはわからないが…それなら、光彩が違った訳に説明がつく。
「ええ、なんていうか…生き返ったのか…どうか…。」
「ああ、無理をしないでくれ…。私が提案したいのはより人の目に近く、機械的な性能がある眼球の交換だ。」
「交換ですか?」
「ああ、ネロ様からも頼まれているから考えておいてくれ…。それより、ロザナ達が食事ができるわけについて話そう、彼女達にはネロ様が管理する魔術核が入っていて、それにより物質からエネルギーを取り出せる。余剰な物は体外に輩出されるが基本的には何でも食べることができる。…まあ、私は木とか食べさせるのはあまり良く思っていないから、一緒の物を食べているんだけどね。」
「…何でも食べられるんですか?」
「ああ、一応ね。まあ彼女達の扱いは魔術核越しにネロ様が監視しておられるので、ガラスとか食べさせたら真っ先に処刑されるし、意図的な四肢の破壊や暴言も逐一監視されているから自分の道具というよりは『施し』かな。君もあまり乱暴にしないように…なるべく、優しくするといい。深みにはまらないようにね。」
そう、アレッシアの父であるアルノルドは品の無さそうな笑いを顔に浮かべた。
この意味は、休暇中の間によくわかったことなのだが…この時の俺はまだ知らなかった。
眠れないというよりは、眠らせてくれない夜が続くことに。
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