第7話 ミリオタと一般人の情熱の差とは?

「ん?」


昇が部屋で本を読んでいると部屋のスピーカーから何やら耳に痛い音が聞こえた。

明らかに人々に恐怖を植え付けようとするその耳障りな音は、緊急地震速報と同じ音を少し含んでいた。


「…なんだよ。」


せっかく読書にいそしんでいたのにっと思いながらも鳴り止むとは思えないような大音響を発し続けるスピーカーに嫌気がさして、昇は部屋の外に出ることにした。

先ほどのヘリコプターが見えてから少ししか経っていないため何かいいことでもあったかなと思い、外に出た昇ではあったのだが・・・。


「早くしろ!」

「下がってください!轢き殺されますよ!」

「…こんなの…ここにあったのか。」


外に出た昇を待ち構えていたのはカメラマン達とその被写体の対空兵器群だった。

カメラのシャッター音と自走対空兵器の機動音がそこには詰まっていた。

フラッシュが焚かれ、白色にしか見えないその物体は昇の目の前をただ通り、過ぎていくばかりだった。


「……。」


フラッシュで目が少しばかり眩んだ昇が目をどうにか開くとそこには、もう無かった。


「ふう、いいものが撮れましたねえ。」

「ええ、まさか03式中距離対空誘導弾が撮れるとはねえ。」

「それに、87式自走高射機関砲(スカイシューター)まで、見れるとは…。」

「……。」


何のことなのか昇には全くわからなかった。

しかし、どうやら目の前にいる人たちにも温度差はあった。

興奮した様子で何やら語り合っている人ととりあえず映像には収めておこうとした人たちの二つだった。


「…とりあえず会議室にでも行きますか。」


そうして、余韻に浸っているごく少数の人と移動し始める人達の間を縫って昇は会議室を目指した。


入間基地第三格納庫


「急げ!急げ!急げ!」

「くぅ、何なんだよもう!人が手伝いから帰ってきたばっかりなのによう。」

「そう言わないで手を動かしてくださいよ!」

「ああ、もうなんで陸戦なんかするんだ!ここは航空基地だぞ!しかも、日本の!基本、陸上自衛隊(あっち)と海上自衛隊(そっち)の協力が主なんだぞ!」

「あっちとかって、なんの話をしているんですか?」

「自衛隊だよ!まったく…何で命令がこんなんなんだよ!」

「まあ、そう言わないで…敵に囲まれているだけですよ。」

「だから、それが異常なんだろう…。あと、お前さっきからおかしいぞ…。」

「何がですか?」

「いや…何でもない。」

「まあ、そういうのも仕方ないですよ。まさか基地にある航空機をランチャーにしろとか、本当何がしたいんですかね?だいたい、空対地ミサイルだってそんなにありませんよ!」

「はあ…基本人類ってのは火に頼れば勝てるからな。」

「そうですね。」


会議室


昇が会議室の前に着くとそこには、すでに自衛官が会議を開く準備をしていた。

達筆ではないがまだ綺麗な方だと言える黒文字で書かれた「「第二会議」」とだけ書かれた紙が張ってあった。

昇はとりあえず中に入って様子を見ることにした。

中にはこの前と同じというよりそのままにしてあった椅子が少しずれてはいるが並んでいた。

昇はこの前と同じ椅子に座って会議が始まるのを待った。

すると、この前も見たおっさん・・・田中昌隆(たなか まさたか)が覗きにやって来た。

しかし、昇はまだ田中を広報担当のおっさんだと思っていた。

そんなこの基地では、浮いてい昇(かれ)を田中はほっとくはずもなかった。


「やあ、君が唯一発見された高校生だね。」

「はい。」


…というか他にいなくね。っとは思うのですがどうなんですかね?。


「はは、そんなにかしこまることは無いさ。そこらへんのお兄さんだと思ってくれ。はあ…さて、本題に入ろう君はここになんで来たのかい?」


っとまあ常識的なただ確認を取るだけの質問を田中はしてきた。


「友達とです。」

「そっか…う~ん、ただ連れられてかな?」

「はい、そうです。」

「そっかあ、いや~君を見ていると昔が懐かしくてねえ。本当は早く戦闘機に乗りたかったんだけど親に反対されてねえ。結局、基地司令(この仕事)についてねえ。」

「はあ。広報担当(その仕事)ですか。」

「ああ、あとはもう航空幕僚長(上の仕事に)就くだけだよ。」

「ああ、引退(そう)ですか。」

「ああ、長かったよ…。」

「そうですか…(任期満了)。」

「さて、君も自衛官にならないかい?」

「はっ、はい!」


今のまったく脈絡も何もない会話からどこからそれが!っと昇は思った。

しかし、それを意に返さず話し続けるのが年長者というものだ。


「いや~、いいよ自衛隊は。だって、やりたいことないでしょ?」


グサッ


「それに、周りから評価されるよ。」


グサッ


「保健も利くよ。」


グサッ


「無理して大学に行って就活難よりはいいよ~。」


EXTRA


「…そうですねえ。」


「ああ、そうだろう。」


まあ、確かにまだ就職先もあっ保健も利くっていうのはいいかもしれないけどな。

命がけとか自殺とか派遣外戦闘とかあるっぽいし。

都市伝説かは知らないけど…。

ブラック企業云々よりは…なんだけどね。


「まあ、そう急ぐ必要はないさ君はやりたいことを見つければいいさ。」

「はい、そうします。」

「ああ、私みたいに成績優秀で学校長からの推薦まで受けて航空自衛隊(ここに)いる私とは違うからね。まあ、結果は変わらないから結局のところ私たちはどんな道を進み選んだとしても、どんなにあの時何をしたとしても行きつく先はたった一つだ。それがどれだけ不幸なことで幸せな事なのか、私にはわからない。だとしてもだ、それでも前しか進めないのが私たちだ。まあ、いずれ君にもわかるようにはなるさ。自分が選んだ責任を取らなければならないことになる時に。」

「司令、そこにいたんですか?」

「ああ、和元(かずもと)君おつかれ。」

「司令…?」

「ああ、そうだよ。どうかしたかい?」

「……。」

「おやっ?」

「はあ…司令、まずは身分を明かした方がいいのではないでしょうか?彼、混乱していますよ。」

「ははは…そうかもしれないな。さて、そろそろ会議を開くとしよう。」

「まったく…すいませんね。」

「いえ、気さくなお兄さんですね。(精一杯のお世辞)」

「ええ、ただの話好きのオッサンでしょ。」

「こほん…。」


数分後


会場にはあぶら汗まみれのおっさん達がいた。

そして、少し臭う。

そのため、アナウンサーのお姉さん方は少し距離を取るようにして座っていた。

例のごとくそのあぶら汗まみれのオッサンが集まるため、もはやサウナ室のような熱気が蒸し返すようなにおいと交わって地獄絵図のようなものと形容しても良いものになっていた。

少し離れたここまでそのにおいは届いていた。


「ええ、それでは第二回目の会議を開きたいと思います。そして、皆様にはいいニュースと悪いニュースがあるため。いい方から紹介したいと思います。」

「そこは悪い方がセオリーなのでは?」

「はい、確かにそうですが…あれなもので…。」

「復旧状況は?」

「救援は来ているのですか?」

「そうだ!そうだ!」

「どうなっているんだ!」


もはや様式美とかしているヤジが国会だけでなくここにも飛んでいた。


「まあ、皆さん落ち着いてさて…、いいニュースですが…。」


ゴクンっときれいに唾を飲み込む音が聞こえた。


「人が見つかりました。」

「おお!」

「やったぞ!これで帰れる!」

「ああ、やっとバスタイムが満喫できる!」


一瞬にして会場は盛り上がった。

俺もその一人だった。


しかし、本題はここからだった。


「…それでは、悪いニュースです。…見つかった人なのですが…どうも敵対的なようで。ヘリコプターで偵察したところ、既に当基地は包囲されていて武装として対空火器搭載型の装甲車と迫撃砲のようなものを観測しており、当基地に向かって真っ直ぐに進行しています。」


「「「「「「はっ?」」」」」」


盛り上がった会場はすぐに冷たくなった。

そして、この次には混乱が訪れたのはすぐだった。


「「「「「「冗談じゃねえ!」」」」」」

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