会敵
第6話 基地に耳あり、空に目あり
入間基地第二格納庫
「はあ…なんでこんな時でも仕事があるのか…。」
「まだ、楽な方ですよ、整備長…。モチベーションは低いですけどね。」
「まあ、そうだろうな。しっかし、仕事が増えたな…。こんなの訓練くらいでしかやらなかったぞ修理なんて…。」
野崎整備長の前にはF-15Jがあった。
言うまでもなく刑部が乗っていた機体である。
「それにしても、あのパイロット扱い悪いですねえ。焦げてますよ、アフターバーナー使ったなこれは。」
「なんせ、空戦したそうだよF6-F(トムキャット)と…。」
「信じられませんねえ…。」
「そうだな、新橋・・・俺もこの傷を見るまでそうは思っていなかったさ。」
そう言いながら、野崎は機体の弾痕を指でなぞった。
「…どこのあほがこんなことしたのか。」
「金持ちぐらいじゃないですか?って、言いませんよ。程度が違いますし、なんせ、レコーダーを見ればわかりますよ。相手は「「本物」」でした。」
「本当にそう思うのか?」
「はい、整備長はそうは思わないんですか?」
「そうだな…。私はレポートを見てから決めることにするよ。」
入間基地執務室
「おつかれさまです。」
「ああ、ありがとう。」
和元からティーカップを貰い、流し込むように中に入っていたコーヒーを飲んだ。
いつもと同じものすごくすっぱい味だった。
なんとか基地全体のことが把握できるようになり、やっと一息いれることができた。
しかし、これといった進展はなくあまり喜ばしい事は無かった。
むしろ、悪化していると言った方がいい。
「…和元くん。」
「はい、何でしょうか?」
「先程届いた資料はどこだ?」
「司令官の目の前です。」
「ああ、これか…。」
「司令、少し休んでは?」
「いや、そういうわけには行かないさ。」
はあ・・・っと、和元がため息を吐いた。
目の前にある資料はデータベースから調べた民間人についてのもの、刑部の件、基地周辺を撮影した写真、そして、今後の試算だった。
「今の復旧状況は?」
「はい、電気、通信、ガス及び水道設備は未だ不断、帰投したF-15Jは現在修理しています。」
「他には?」
「はい、レーダーは空陸共に正常に作動しています。」
「そうか…少しばかり仮眠を取ることにする。」
「わかりました。」
「ああ、それじゃあ。」
そう言って、田中は執務室を後にした。
「……。」
順調にことは進んでいたのだがなあ…。
はあ・・・しっかし、なぜここにいるのがこんなに少数なんだ?。
上のお偉いさんとかもいたはずなのだが…。
それにしても、こんな事態になるとはな…。
F-15Jの件だって、おそらくあの国のスパイだろう。
無全封鎖とかの支持は受けていないし…。
あの発光現象とか言っているやつが原因とか言われてもあれをどうやって分析したらいいのやら…。
しばらくして、刑部は仮眠室で少しばかりの休みを得た。
基地内時間 午前五時
「う…う~ん…。」
聞きなれない音で目を覚ましてしまった。
「あと五分だけ…。」
「……。」
「うるさいなあ、目覚まし時計がぶっ壊れたか?」
「…せえい!」
ベッドから起き上がってみるとそこには、見慣れないものがあった。
そして、それは昇を現実へと戻した。
「…夢じゃなかったのか?」
「ここは…まだ入間基地。」
部屋の机の上には、昨日疲れながらも折りたたんだと思われる服が置いてあった。
他に衣類がないため、昇はその服を着た。
少しばかり汗のにおいがするが許容範囲だろう。
「さて…どこに行こうか。」
「「総員、点呼!」」
「ん?」
外から叫び声が聞こえた。
何をやっているのだろうか?。
「行ってみるか…。」
部屋に居ても何もやることがないため、身支度を整えて昇は部屋を後にした。
声は外から聞こえたので玄関を通り、外に出た。
声を頼りに歩いていくと広場のような場所に来た。
そこには、たくさんの自衛官がいて、体操をしていた。
辺りには先ほどの音で目を覚ました報道関係者らがいた。
幸いなことに寒くはなく、涼しかった。
体操が一通り終わると解散し、それぞれ違う方向へ動き出した。
すると、放送がかかり俺は食事をした。
そのあと、部屋に戻った俺が呼び出されたのは警報が鳴った後だった。
入間基地内レーダー
「…う~ん、これは…。」
「どうした?」
「はい、地上レーダーに微弱ながら反応がありました。現在、その数増加中…この動きは…。基地を取り囲むように移動しています。」
「救援部隊か?いや、そんな報告は取れていない。」
「偵察に行かせますか?」
「ああ、その方がいいだろう。連絡を!」
「はい!」
「…頼む、味方であってくれよ。」
入間基地執務室
「さて、そろそろ会見の時間か。」
「基地司令!」
バタッっと、大きな音を立てて和元がやって来た。
「…どうしたんだ、話ならあとで。」
「いえ、重要なことです!地上レーダーが何か捉えました!」
「本当か?」
「はい、それでOH-1(オメガ)で様子を見て来て欲しいと連絡が・・・。」
「わかった、ただちに出撃してくれ、私も映像を確認する。」
「了解しました。」
やったぞ…これでもう後は心配することは何もない。
入間基地第四格納庫
「あっはい、わかりました。山口さん、OH-1(オメガ)動かせますか?」
「ああ、動かせるぞ。」
「すぐに準備してください。」
「…何かあったのか?」
「司令部よりレーダーに映るものがあったそうで、確認しに行きたいと。」
「わかった、すぐに準備する…・まったく、F-15J(あれ)に人を回しているって言うのに。」
滑走路付近
「えっ、動きがあったって?」
「はい、扉が今、開き始めたそうなんですけど…。」
「はあ…そういうのは基本換気とかそういうのだとは思うのだが…。わかった、いくぞ。」
「はい!」
「…最終確認終了、いつでも行けます。」
「了解、聞こえるか?管制塔?」
「はい、聞こえています。」
「了解、OH-1出撃。」
滑走路に空気を叩き付けるようにして、OH-1は浮かび上がった。
一定の高さにつくと機体を傾け、OH-1(オメガ)は飛んで行った。
そして、静かな音とともに目的の場所へと飛んで行った。
パタパタパタパタ
「……ん?何の音だ?…ああ、ヘリコプターの音か。まあ、ここ基地だしな。さて…やることが何も無い…。」
数分後
「こちら、OH-1目標地点へ到達したこれより観測を開始する。」
「了解、目視で確認できますか?」
「いや、高度を少し下げる…あれは…。」
「どうしましか?」
「…歩兵部隊と思われるものを発見。」
「補足、拡大します。」
「「おい、あれって…。」」
「「いや、そんなことは無いだろう。」」
「聞こえますか?OH-1、確認できるものを…。」
「歩兵部隊だ…重武装の…。」
「…了解、次のマーカーに。」
「了解。」
「…車両を発見、随分とクラシックなタイプです。」
「「観光地か、ここは…?こんなもの、見たことないぞ。・・・。」」
「「…クロスレイ装甲車?」」
「「そんなものあるわけないだろ!」」
「…なんですかね…これは。」
「わからない…観測を続ける。」
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