第57話

 軽トラックにゴミ集積場で見つけた財宝を積み込んだ。数は少ないものの捨て値で売り飛ばしても二百万新円以下になるような事はないだろう。

 悠々とネオサイタマへの帰路を目指していると。

 後方より二酸化炭素の排出量の多そうな煙突が四本も八本もついている大型バイクに乗っている集団が近づいて来た。

 全員釘を埋め込んだバットを持っていたり、アイスホッケーマスクをかぶってショットガンを携えていたり、金髪ロン毛に中華風の服を着た優男だった。


「なんか変な連中だなぁ」


 クースケがそう思っていた瞬間である。

 モヒカン頭がロケットランチャーを構えた。


「なにいおいいいいいいいいいいいいい!!!!!」


 コルデーの反応は素早かった。助手席の窓から素早く荷台に飛び出すと、道具箱の中から布袋を掴んで投げた。布袋の中身は。

 袋一杯の釘。釘の材料は。

 もちろん金属であるっ!!

 発射されたロケット弾は盛大な爆炎をあげた。


「ヒャアア!我慢出来ねぇ!!撃っちまったぜ!!!」


「やっちまったか!!?」


「いや。まてっ!あれを見ろ!!」


 軽トラックの荷台に仁王立ちになるコルデーと共に速度をそのまま走り去る。


「バカなっ!!直撃したはずっ!!」


「くそうっ!いったいどうやって今の攻撃を防ぎやがったたんだっ!!」


「貴方達は何者ですっ!!」


 コルデーは𠮟りつけるように追剥(ハイウェイマン)達に言った。てか、道路の上で時速八十キロ以上出しながら襲ってくるのでこれはもうハイウェイマンと表現するほかないだろう。


「俺達は泣く子も黙るシード軍団ヨっ!!」


「シード軍団?」


「その通り。そして私がリーダーのストライク様だ」


 金髪ロン毛の中華風の服を着た男が名乗った。


「俺様はイージスよ」


 黒いホッケーマスクをかぶったショットガンの男も名乗る。


「そして俺はブリッツ」


「俺はバスター」


「俺はデュエルだ」


「俺様は本当に頭のいい男なのだ」


「その通り。ストライク様は本当に頭の良いお方」


「ゴミ集積場にはお宝が沢山ある」


「だが自分達で掘り出して探すのは疲れてしまう」


「そこで他の奴らが見つけて持って帰るところを襲えば楽にお宝が手に入るって寸法ヨ」


「本当にストライク様は頭の良いお方」


「結局ただの追剥じゃねーかよっ!!」


 クースケは怒鳴った。


「ついでにテメーの命と財布の中身を置いていけっ!!」


 イージスはショットガンを構え、軽トラックに向け引き金を引いた。走行音に混ざって響き渡る発射音。

 しかし!

 何も起こらなかった!!


「あるぇえ??」


 イージスは弾を込め直した。もう一度引き金を引く。

 しかし!

 何も起こらなかった!!


「くそっ!あのなんとかって酒場にいたジジイッ!!粗悪品掴ませやがったな!!」


「酒場にいたジジイ?」


「ネオサイタマのスラムで会ったジジイだよっ!!ツーリングしてた際に喉が渇いたから軽く酒でも飲もうかって適当な店に入ったんだっ!!俺達は酒盛りをしながら言った!戦車を一撃でぶっ壊せるような強力な銃はねぇかってな!すると店で不味い泥水コーヒー飲んでいたジジイが言ったんだ!それなら近くの店で買えるってな!!」


「泥水コーヒー飲んでるジジイ・・・ですか」


「紹介された店で買ったのがこの銃ダゼ!くそっ!戦車に穴を開けるどころか当たりもしねえじゃねえか!!」


「それ狭散弾ショットガンじゃないですか?」


「今日サンダル?」


「隣にいるお友達に向けて撃って見てください」


 イージスは隣を走っていたブリッツに向けて狭散弾ショットガンを発射した。

なんということだ!ブリッツの乗った黒いバイクのみが粉々に粉砕!!当然運転している人間は死んでいないっ!!

 スーパーセーフティッッ!!


「ブリッツ!?ブリッツうううう!!、!」


「貴様!よくもブリッツを!!」


「いや。今撃ったの貴方じゃないですか」


「黙れ!俺がブリッツを撃つような事があるものかっ!」


「そうだろうなブリッツはピアノをはじめとする楽器が好きな心優しい奴なんだ」


「音楽が趣味なんですか?意外ですね」


「そうだろうな。俺もあのストラティバリウスとか言う楽器があんなに高く売れるとは思ってなかったぜ」


「そうだな。これから毎月楽器を売りにいこうぜ?」


 コルデーは暴走集団に対して知的センスがあると少しでも思ってしまった自分を恥じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る