第56話
クースケ達の乗った軽トラックは大きな河川に架かる、橋を渡っていた。
「クースケ。何しに行くんだ?」
イッパイアッテナは相変わらず屋根の上だ。別に空を飛んでいても、今橋を渡っているがそこの河の中を立体映像が泳いでいても構わないのだが。
「工場地帯の大半は倒産している。だがまだ稼働している施設もあるんだ。例えばゴミのリサイクル施設とかな」
「ゴミのリサイクル施設?」
助手席に座るコルデーが尋ねる。彼女は生身の人間なので、まぁ一部内臓以外は機械のサイボーグではあるが、空を飛んだりすることはできない。よってクースケ同様車の中。助手席である。
「で、溶鉱炉に放り込まれて金属インゴットにされる前の人形の部品を拾ってきて、中古ジャンクパーツを組み合わせてワシリーサの修理部品にすればいい。爺さんはそう言ってるんだよ」
「へぇ。ジェイムズ=サンが。考えましたねぇ」
「クースケ。あれレストランか?」
イッパイアッテナが道路脇に広い駐車場の理論ある店舗を発見した。電光掲示板のついた大きな看板もあるが営業はしていない。
「いや。あれは閉店したパチンコ店だな」
「パチンコ店?なんだそれは?」
「庶民の娯楽って言ってな。昔はネオジャパンの至る所にああいうパチンコ店があったんだ」
「ふーん。どうして潰れてるんだ?」
「ネオジャパンの国民がパチンコも出来ないくらい貧しくなったからさ」
「どうして貧しくなったんだ?」
「そりゃネオジャパン政府がしっかりとした経済政策をしなかったせいに決まってるだろう」
軽トラックは道路を真っ直ぐ。ゴミ集積場に向けて走っていった。ちょっとしたドライブを楽しんだ後、クースケ達はネオカワグチネオ産業廃棄物処分場までやってきた。辺り一面ゴミの山だ。まるで天井から食事から降りて来る自動食堂で食事をし、カップヌードルと缶ジュースを腹に入れ、さて帰ろう、と思って席を立つ。すると自動的にテーブルが開いてその下のダストシュートに携帯電話が吸い込まれしまう。
慌てて拾おうとして自分も頭をダストシュートに突っ込む。下は店の地下に設置されたベルトコンベアーで、行きつく先は店のゴミ箱だ。
そう言えばクースケは以前街のゴミ捨て場の中で携帯電話を握りしめたまま息絶えた死体を発見したことがあった。
当然都市警備に通報する。検死担当はドクタージェイムズであった。
「これは、事故だな」
「え?事故?他殺じゃなくて?」
「この女性はゴミ箱に落ちた携帯電話を拾おうとしたんだ。そして自分自身もまた。ゴミ箱に落下してしまった。そして一緒にプレスされてしまった。別に他殺でも自殺でもない。事故だ。この事件に犯人はいない。店側に責任もいない。はいこれ検死報告書」
ジェイムズ氏の検死報告書を受け取った被害者遺族は大変立腹した。
「こんなものは出鱈目だ!裁判に訴えてやる!!!」
「真実なのになぁ・・・」
その時嗅いだ死体に近い臭いが辺りに漂っている。
流石に死体はなさそうだが、錆びついた自動車、既に銅線が抜かれたエアコンの室外機、冷蔵庫、砕けたハイセンスなテレビ。水洗トイレなどが落ちている。
「さて、探すか」
軽トラックの荷台には道具箱が設置されている。軍手やロープ。ハンマーやかなてこなどの各種工具が入れられている。雨除けの雨合羽ももちろん用意されている。クースケはその中からとりあえずシャベルを取り出した。
「じゃあ適当に掘って、使えそうな部品があったらトラックに積もう」
「別に適当に掘る必要なんてないだろ」
イッパイアッテナ廃材の山をめり込むように歩く。立体映像なので障害物などお構いなしに直進可能である。そして山の中から缶ジュースを持って戻ってくると空中に座るポーズを取る。そして蓋を開けて飲み物を飲み始めた。いや、これは瓦礫の中からジュースを取り出したのではない。イッパイアッテナは立体映像なので本体がある、AKIRAの店内。その一角に用意された部屋。エアコンやアニメのDVDやテレビ。そして飲み物が入った冷蔵庫などがある。立体映像なのでそこまで表示はされないのだ。
「ええっと。確かこの機械を操作して。おい。そこの鉄山を越えた先にゾゾなんとかって書いてあるな?」
「ゾゾリウムか?」
「たぶんそれじゃね?」
「コンピュータの集積回路なんかに使われる金属鉱石だな。まぁ金になりそうだし貰っておくか」
酸の雨がにわかに降る中、雨合羽を着たクースケはゾゾリウムがあるという方向へと向かう。
そこには炊飯器があった。
「ゾゾリウムはその炊飯器の中だぜ」
「いや。これ。どうみても炊飯器だろ」
クースケは炊飯器を開けた。
なんと!ゾゾリウムをみつけた!!
「なんで炊飯器の中にゾゾリウムが入っているんだろう・・・」
「お、他にもあるぞ。今のよりもはっきりしているな」
「また炊飯器があるのかよ?」
炊飯器はなかった。
代わりに地上に野ざらしになったダッチワ・・・もとい。セックスワーカードールが遺棄されている。表面の人工皮膚がところどころ剥げ落ちてなければ普通に人間の死体が放置されていると勘違いしてしまうかもしれない。
「なんで歩くだけでお宝が転がってるだ。このゴミ捨て場は?」
「あ、イッパイアッテナ=サン。これ新型のゲームステーションじゃないですか?」
「おーじゃあそれも拾っておいてくれ」
「だからなんでお宝ばかっり落ちてるんだよ・・・」
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