第52話

「不佞(ふねい)の同族と思うたが。どうやら違うようだな」


 下げ角髪の女はコルデーに向かってそう言うと、手に携えた巨大な雷刀と振り凪

ぐ。

 派手な攻撃だ。避けるのは造作もないことである。コルデーの代わりに後ろにあったサーバータワーの一つが切られ、派手な電気スパークを上げて吹き飛んだ。

 と、同時に左手から九発。小さな電気で産み出されたナイフが撃ち出された。扇状に飛翔し、バラバラに飛んでいく雷の刃物は到底よけきれるものではない。うち一つがコルデーの右足に命中し。

 彼女はわずかに顔をしかめつつも安定した足で床に立つ。


「ふむ。普通の人間よりかは動きも良い。身体も丈夫。腕力も優れておるのであろうな」


「少し前に色々ありましたので」


 先ほどより若干息苦しい感じがする。何らかの毒ガスのようなものを噴霧しているのかもしれない。クースケを逃がしておいておいて正解であったとコルデーは安堵した。

 自分は以前重傷を負った際、肺を人工物に置き換えてあるのでしばらくの間なら耐えられるだろう。

 だが、それも三十分も持たないはずだ。

 下げ角髪の女が雷を振るう。またしてもサーバータワーの一つが切られる。別のサーバータワーの陰に転がりこんだコルデーはタワーに空いていた隙間からマシンピストルを発射する。

 下げ角髪の女が左手を突き出すと電気が長方形に広がり盾状の物体を形成する。

 コルデーは手りゅう弾のピンを抜いた。投げ返される可能性を考慮し、ギリギリまで待ってから放り投げる。さらに隠れているサーバータワーから場所を移動する。

 下げ角髪の女は一瞬コルデーを狙おうとしたが飛んで来る手りゅう弾に気づいたようだった。キャッチしようと思ったのか空中の手りゅう弾に向けて手を伸ばす。

そこ目がけて走りながらマシンピストルを撃ち込む。

 途中で弾が切れる。続いて爆発。サーバータワーの陰に隠れて予備弾倉と交換する。

 噴煙が消えると残念ながら無傷の下げ角髪の女が立っていた。全身を薄い電気の幕で覆っている。

 防がれたか。


「中々良い筋をしておるではないか。まぁ不佞に当てる事が出来ねば意味がないが。ところで見たとこ。そちが持っているのはその単筒と破裂玉。まぁ他にあるとすれば短刀の類であろうなぁ」


「さぁ。どうでしょうねぇ」


 図星である。


「不佞の宝力を撃ち貫くには少々力不足と見た。それにその。実弾兵器。というのであろう?撃つには弾が必要ではないか?あと如何ほど残っておるのかな?」


「答える必要はありませんよ?」


 マシンピストルの予備弾倉はもうない。手りゅう弾は残り一つ。


「ではいいことを教えてしんぜよう。不佞の活動限界残時間は、通常モード。とやらで五時間三十分らしいのぉ」


「それは、どうも御親切に、ね・・・」


 息が苦しくなってきた。こっちはその十分の一も動いてられそうにない。


「まぁまぁ。不佞は圧倒的力を持つ物が弱者を一方的に嬲り殺しにする。というナロニーメション的な道楽は持ち合わせておらぬ故。従って」


 その時である。

 無駄話をする下げ角髪の女の背後より、大量の水流が流れ込んできたのは。

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