第50話

「不佞(ふねい)を鉄の棺より解き放ってくれて一応の礼を言っておこう」


 下げ角髪から伸びる長い髪を持つ女はそれだけ言うと、サーバールームから出て行こうとした。室内にある林立するコンピュータの柱にはいずれも大きな穴が空いており、どれも使い物にならないであろうことが容易く想像できる。

 もちろんそれはクースケが投げた手りゅう弾によるものではない。サーバールームの損傷は室内全体に渡って起きているものだ。それをやった人物は。

 おそれく。彼女。


「おい!しっかりしろ!」


 クースケがとっさに自分を庇って手りゅう弾の直撃を受けたワシリーサを抱き上げた。首がもげる。

 まぁ。ロボットだしな。


「ふむ。炸裂弾では死なぬようであったか。それとも外れたか」


 肉付きの良い体を水着を想起させる和鎧で覆っている。その鎧はKS鋼にも似た光沢を放っていた。

 女はその手で雷の。そう。それは電気などと呼べるものではなかった。まさに雷である。

 女はその雷をクースケに向かって振りかぶり。

 その背後からコルデーが蹴りつける。


「逃げてくださいクースケ=サン!私が時間を稼ぎます!」


「すまん!すぐに戻る!!」


 判断は早かった。怪我人?抱えてその場をコルデーに任せ、クースケはとりあえずワシリーサの頭を拾ってその場を後にした。


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