第46話

 突如飛来する大型の火砲。独特の発射音。

 ズブの素人の塩漬社長ですらわかる。


「バズーカ砲だっ!!」


 直撃を受け、電動カートが爆砕する。


「くそっ!いったい誰がこんな派手な真似をっ!!」


「フォフォフォ、ワシじゃよ」


 森から老人が出て来た。


「え?何あんた?」


「うむ。儂はネオサイタマゲートボールクラブのモノじゃない」


「違いますよお爺さん。そこの社長さんを生け捕りにすると報奨金が出るんですよ」


「おお。そうじゃったそうじゃった。素直に掴まってはくれんかのう」


「渡すと思うか?」


 拳銃を構えるボディガード。


「その銃。ベレッタM9じゃのう。先ほど撃ちまくって丁度15発。もう弾は残っておらんはずじゃろう」


 ボディガードはポケットからマガジンを取り出すと新しいのと交換した。


「これでまた15発撃てるようになったぞ」


「婆さんや。降伏しよう」


「そうですねえお爺さん。刑務所のご飯は美味しいと聞きますし」


「とっとと撃ち殺せ!」


 塩漬社長は命令する。


「いや。これは殺す価値もない人種の人間だから」


 ボディガードは命令を拒否した。昨日合成ビールを飲みながら「なにこの映画のセリフwww。こんなのこの仕事やってて使う事なんてねぇーよwww」って馬鹿にしていたのに。いやあ。映画って本当に素晴らしいですよねえ。


「尋問しても碌な情報は聞けそうにないなぁこれ」


「うむ。儂も酒場の親父からお前さん方が車に近づいたらこの大砲を撃ってくれと言われただけでな。凄いんじゃぞ。弾にコンプーターが積んであってな。自動的に命中するんじゃ」


「バカですねえお爺さん。コンピュータってのはテレビみたいな形をしているんですよ。そんな小さな物に入るわけありませんよ」


 うあぁ。その飲み屋の親父の話も信頼できそうにねぇ。どこの飲み屋だって聞いて、調べに行ってもその飲み屋の親父は私はそんな依頼を頼んだ覚えはありませんってしらばっくれるだけだろうな。これ。


「くそっ!どいつもこいつも役立たずめっ!」


 塩漬社長は最初に撃ち殺されたボディガードに近づくと死体を蹴り始めた。


「あ、社長!まだ森の中にスナイパーが」


「そうだぜ。他にもいるぞ?」


 撃ち殺されたはずの死体が塩漬社長の脚を掴む。そして社長をスナイパー側に向けた。


「しまった!」


「なっ!貴様!!死んだはずでは!!?」


「なんかのアニメで頭に血のりのついた銃弾打ち込むってのがあってなぁ。以外に簡単に引っかかるもんだ」


 死体に扮していた男はサングラスと。『AKIRA』と書かれていたマスクを外した。


「じゃあお前ら。社長さんは有難く貰っていくぜ。嫌なら」


 さらに森から増援部隊。


「ここはゴルフクラブじゃなくてゲートボールクラブだったらしいな」


「先日のネオサイタマ都市警備ビル襲撃の影響で市街の警備が手薄になっている。治安悪化の為街の民間企業は独自に警備員を雇っている。臨時でな。そうなりゃ一人や二人。俺みたいなのが紛れ込む事も簡単だろ?」


「書類審査も甘くなるからな。で、俺達をどうする?」


 クースケは携帯を操作した。ボディガードの一人の携帯にメールが送信される。男は受信したメールを確認した。


「わかった。お前の条件でいい」


「うおおおおお!!!きさまあああああああああ!!!金をはらっているんだぞおおおおおおお!!!!」


 ボディガードは老人組合と共に去る塩漬社長を見送った。


「メールにはなんと?」


 ボディガードの片割れが携帯電話を持った相棒に尋ねる。


「あとでうちの会社が『酒場のマスター』からタレコミ情報を貰う。それを使って廃屋に捕らわれた塩漬社長を無事救出する」


「あの。それ自作自演とかマッチポンプとかいう物なんじゃ?」


「気のせいだ」

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