第45話

 デイライトワークスはゴルフ場を持っている。

 何故か?英霊娼館システムによる莫大利益により、デイライトワークス社長障子塩漬は事業拡張計画を行った。それがゴルフ場経営である。

 社員たちの給料を上げる事なく。

 そして彼は今、ゴルフ場にいる。


「いやぁ。今日はいいゴルフ日和だなあ」


 晴天の中、スリングを行う塩漬社長は上機嫌であった。ナイスショットしたので電動カートに乗って次の場所に移動する。


「おい!邪魔だ!どけ!!」


 一応社長なのでボディガードがいる。黒服のスーツ姿の若い男が三名。


「ちっ!気が利かない連中だ。やっぱりキャディに女でも連れてくればよかったか」


 まぁ急に時間ができたので仕方がない。というより医者に健康の為に少し運動をした方が良いと勧められたので仕事をすべて部下に押し付けてゴルフをしにきたのだ。

 えっと。医者の名前は確かジェイソン。

 まぁいいか。どうでもいいわ。

 芝生のど真ん中にボールを発見。第二打を打つべくクラブを構える。


「むっ?!」


 ボールの前に一本だけ妙に伸びた芝生があった。

 塩漬社長は歩みよると一本芝を無造作に引っこ抜く。


「これでよし」


「あの社長。ゴルフはクラブでボールを叩いてゴール地点である穴に入れるのが目的のずぼらですので。手でボールを触って投げたり、コースに生えている木の枝を折るなどをして、コースに変更を加えるのは禁止行為です」


「黙れ!私はボールに触れてなどおらんわ!それに木の枝も折っていない!!貴様はボディガードなんだから余所見してないであっちの森でもみてろっ!!」


「わかりました」


「なんだか腹が減ったな。おい。カップ麺があったろう。用意しろ」


「え?カップ麺?そんなもんどこに」


「電動カートに積んである。早く用意しろ」


 本当にあった。お湯の入ったポットまである。


「できました」


「グズグズしおって。おい。なんだこれは?」


 ボディガードがカップ麺と一緒に持って来たのはプラスチック製のフォークだった。


「私は今からカップ麺を食べるんだぞ!箸だ!箸を寄越せ!!」


「え?だって袋の中にはフォークしか入ってませんよ」


「何を言っているんだ!カップ麺を食べるだから箸だ!箸に決まっているだろう!!」


「そういや途中でよったコンビニ店員東南アジア系だったな」


「そっか。きっとカップ麺を食べるのに箸を使わない国から来たんだろう」


「くそっ!カップ麺を食うには箸に決まってるじゃないかっ!!これだから移民は駄目なんだっ!!これじゃあカップ麺が食えるわけないだろっ!!」


 塩漬社長はカップ麺を投げ捨てた。


「ああ!カップ麺を投げ捨てたは行けません!!」


「そうです!カップ麺の容器はプラスチック製なんです!自然分解されないんですっ!!地球環境を汚染してしまうっ!!学校に行かずに飛行機のファーストクラスに乗って世界中を飛び回るスウェーデン人を怒らしてしまうっ!!」


「だが麺とスープは分解されるだろう?じゃあ問題ないな」


「ダメです!野生動物達が食べてしまいます!!」


「生態系のバランスが崩れる!!自然が持たない時が来ているのですっ!!」


「本当に五月蠅い連中だ。ならお前ら拾っておけ。私は第二打を打つからな」


 塩漬社長は自分が蒔いたゴミをボディガードに片づけさせ、自分はゴルフを続けることにした。


「うむ。今度も良く飛んだな。おい。貴様どこを見ている?」


「いえ。自分はボディガードなので森林に怪しい奴が潜んでいないか確認を」


「いるわけないだろう。あとナイスショット。ぐらいは言ってくれ」


「ご命令でしたら」


 ボディガードは振り返った。


「ナイスショット」


 うむ。ナイスショットだ。先ほどまでボディガードが監視していた森から銃声がして後頭部から赤い飛沫が飛び散り、彼は倒れた。


「えっ?」


「襲撃だあああああああああ!!!」


「社長をまもれえええええ!!!!」


 残りのボディガードはとりあえず拳銃を銃声がした方向に撃ちつつ社長を庇う。

 相手の正確な位置がわかっているわけではない。ただ、ひるませる効果はあったらしく、続く第二射は命中しなかった。


「だいたいあの辺りか?」


「くそっ!いい位置だ!木が多くて弾を避けるのにちょうどいい!!」


「なんとかしろっ!ボディガードだろ貴様らっ!!」


 ボディガードが塩漬社長に近づくと銃撃が止んだ。


「今だ!攻撃しろ!!」


「無理です。弾切れだ」


「こっちもだ」


「なんとかしろよっ!」


 狼狽する塩漬社長。


「カートに予備の銃が積んであるからそこまで行けば」


「そうだな。遮蔽物にもなる」


 ボディガード達は塩漬社長を庇うように電動カートに走る。


「妙です。攻撃が来ませんよ」


「社長の殺害じゃなくて誘拐が目的か。有難い」


 さらに電動カートに近づいたところに援軍が来た。

 もちろん襲撃して来た連中の方にだ。

 なんて頼もしいっ!!

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