フューチャー・オブ・カンパニー・マン・デイライト

第42話

 人権保護団体を語るテロリストの襲撃から一夜が明けた。

 クラウズは帰ってくることはなかった。

 死んだわけではない。ほぼ無傷なので負傷者に代わり後始末組に追われている。負傷者は普通にネオサイタマ市内の病院だ。


「今、このスラムは空前の好景気にある」


 いつもの『AKIRA』の店内。大豆製代用珈琲(ソイカフ)を飲みながらジェイムズ氏は言った。


「好景気?」


 同じくソイカフを飲みながらクースケは聞き返す。


「そりゃまぁいつもは空いてるこの店もなんだか客が多いな。入ったばかりのアッテナも接客に大忙しだ。人手が足りなくてワシリーサまで『AKIRA』の制服を着ているぜ」


「なぜ。社会にスラムなどというものが存在するか。というと突きつけて行けばスラムの住人達に金がないからだ。そしてなぜ彼らが金を持っていないかと言えば金を稼ぐための仕事がないからだ。都市警備の建物が破損したせいでその修復作業は急務。なので上下水道の敷設。配電工事。ネット回線。建物本体のコンクリート補修作業。家具類の搬入。惜しくも亡くなられた都市警備の職員の葬儀など大量の仕事が発生している」


「で、大量に仕事が発生してこの好景気ってことか」


 皆、朝のモーニングセットを食べては工事現場に向かう者達ばかりだ。


「なぁ暇を持て余したオッサン共。食べ終わったら席開けてくんねえーか?そこにいられると店の回転率下がっちまうから」


「おお。すまんすまん。では奥に行こうか」


 ジェイムズ氏はソイカフの入ったコーヒーカップを片手に店内奥の手術室もといビリヤードルームへと向かった。クースケも続く。


「さて。十分な仕事をしてくれたのでクースケ=クンには約束の報酬を支払おう。君のお母さんの人格を模したデータがフルダイブMMORPGに存在した」


「そのゲームは去年の4月1日にサービス終了しているんだよな?」


「その通り。しかし奇妙なゲーム会社が一社見つかった。その名もデイライトワークス」


「デ、デイライトワークスだって!!物凄く有能そうな社長がトップに君臨していて、プログラマーを始めとする従業員全員がみんな希望に満ちて仕事をしていて、会社内には不満を持つ社員なんて一人もいなさそうな会社じゃないかっ!!その会社がどうかしたのかっ!!?」


「デイライトワークスはイケメンビーチボーイズというゲームを発表した。アニメとのタイアップ企画でイケメンのサーファーが登場する音楽ゲームだ」


「女性向けタイトルだな!ガチャが回りそうだな!!」


「三日でサービス終了した」


「そんなばかっな!イケメンビーチボーズが三日でサービス終了してしまうだなんて!!デイライトワークスに限ってそんな事はあり得ない!!何かの間違いだっ!!」


「デイライトワームスは蒸気機関車のガバガバネリというゲームを発表した。江戸時代を舞台に蒸気機関車に乗った女の子が銃を撃ってゾンビと戦うアニメのゲーム化だ」


「侵略の巨人のパクリと散々馬鹿にされたアニメのゲームだな!ガチャが回りそうだな!!」


「一年間のメンテナンスをした。出来上がったのはファミコン時代のコマンドRPGだった。サービスを終了した」


「そんなばかなっ!!デイライトワークスに限ってそんな事はあり得ない!何かの間違いだ!!」


「ネットの動画サイトを見ていると突然ピンを抜いて勇者を宝箱に導いたり、ゴブリンをやっつけたりするゲームの広告が流れる。デイライトワークスの新作だ」


「わぁ!なんて面白そうなゲームなんだ!是非ともやりたいなっ!!」


「しかし実際にインストールしてもパズルゲームでは遊べない。凄くつまらない絵合わせゲームが始まる」


「そんな!デイライトワークスに限ってそんな事はあり得ない!何かの間違いだ!!」



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