第40話
ジェイムズ氏が負傷した都市警備隊員の処置を終わらせた頃、クラウズの無線に通信が入った。
「エマージェンシー!エマージェンシー!こちらネオサイタマ都市警備本部!!テロリストと思しき敵の攻撃を受けている!!繰り返す!攻撃を受けている!!」
「なんだと!どういうことだ?」
「エマージェンシー!!エマー・・ザッ、ザザッ・・・」
無線は聞こえなくなった。
「どうかしたのかね?」
「いえ。都市警備の本部がテロリストの攻撃を受けていると通信が」
「あり得ない話ではないな。警官と言うのは怨みを買う仕事だ。十年前に逮捕された犯罪者が出所した後逆恨みで連続して警官殺しをする事もあるだろう。大人数が出動しているのならばその隙をついて攻撃する連中がいてもおかしくはない」
再びクラウズの無線に通信が入った。
「こちらアルファチーム。まもなく感染者の巣に突入する。巣の手前で待機」
「こちらブラボー。軽症者二名。若干の抵抗。想定範囲内。おそらくアジトで待ち構えているものと思われる」
「こちらチャーリー。地下道に突入した際に重傷者一名を出し、搬送に一名を使用した以外に離脱者なし。敵の攻撃はすべて後方から。おそらく餌を探していた連中が戻って来たものと推測される。このまま作戦続行されたし」
「ふむ。どうやら突入隊はほぼ無傷のままアジトの中心部まで行ってしまったようだね。これはいかん。今から呼び戻すのは時間がかかり過ぎる」
「いや。都市警備の本部が襲われているんですよ?援軍を送らないと」
「何言ってるんだい。君達が援軍ダヨ」
十分後。クラウズはクースケ達と共にネオサイタマ都市警備にいた。
「おー。やってるやってる」
「ねーねー。クースケ。あれ何かしら?」
ワシリーサが尋ねる。
「あれか?自走戦闘車両。いわゆる戦車って奴だ」
そう。都市警備本部ビル前の道路には戦車が一両。存在していた。
「まぁ。御自慢の戦争でもない限り壊れないコンクリートの建物も実際に戦車使われたらこんなもんだよな」
都市警備本部ビルはあちこち外壁が崩落している。その崩れた壁の隙間より、生き残った都市警備の人員が思い出したかのように発砲している。が、劣勢なのは明らかである。
「糞ッ!どっからあんなものがっ!!」
悪態をつくクラウズ。
「まぁどこでもいいだろ。え?おい!コルデー?!」
クースケ達は近くの建物の陰に隠れて様子を伺っていたのだが、コルデーが一人で道路の真ん中に飛び出した。
「なんだ!女!!殺すぞっ!!」
戦車に乗ってイキッていたテロリストが吠える。
「じゃあ。その大砲でお願いします」
コルデーはニッコリとほほ笑んだ。
戦車上のテロリスト明らかに腹を立てたような顔つきなり。
「撃ち殺してやる!!」
副武装のガトリングを使用した。
それを軽やかステップで回避するコルデー。当然当たらない。
「こうなりゃ引き潰してやるっ!!」
戦車はコルデー目がけて突進を開始した。
クースケはクラウズの肩を叩く。
一刺し指で自分の手の平を突いた後、握り拳を造った。
クラウズは親指を立てた。
戦車がクースケ達の前まで来た。
「なっ!お前ら!!」
搭乗員を一瞬でぶちのめし、無力化する。
「今のハンドシグナルの意味。よくわかったな?」
「こっち来たら仕留めるっていうことでしょう。それよりも」
クラウズはコルデーに話しかける。
「危ないじゃないですかコルデー=サン。連中が大砲を撃ってきたらどうするつもりだったんですか?」
「いえ。弾はないってもうわかってましたし」
「弾はない?」
「あ、オレが調べといたぞ」
イッパイアッテナの立体映像が現れた。
「調べたってどうやって?ゲームみたいにクリックして相手のHPやMPがわかるのかよ?」
「いや。ここにいるオレ立体映像じゃん。だからさ」
イッパイアッテナは立体映像をアスファルトの道路にめり込ませた。上半身が埋没し、首だけになる。
「こうやって中の様子を伺って弾が残っていない事を調べといたんだよ」
「なるほど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます