第32話
そんなジェイムズ氏の思い出話を聞いているうちに「彼女」が目覚める。
起動に必要な電源の充電が完了したのである。
瞼を開けた彼女は怪しげな光をその瞳から放ちながら、ゆっくりと起き上がる。
これがどこかの研究所か、あるいは古代の神殿ならそれこそ触れてはいけないものを目覚めさせてもらった。まさにそういう感じである。
だが彼女が寝ているのは『AKIRA』店舗奥にあるビリヤード台であり、壁には水着の女性がビールジョッキを持った剥がれかかったポスターが存在する。
そういや先月酔っぱらた客が店内でハンドガンをぶっ放したな。即座に叩きのめされた。ジェイムズ氏は言った。
「君。カード持ってるね。ちょっと失礼。残高少ないねぇ。内臓切り取ってからネオトウキョウの海に捨てに行こうか。え?助けてくれ?ブボカァ医者だから患者がそう言ったら助けるよ。うん。見捨てないよ。でも君患者でもないしお金も持ってないよね。今カード残高確認したし。何でもする?えー。今他のお客さんに迷惑になるようなことしたしなーとりあえず店の壁直さないといけないんだよねー」
あいつ急いでお袋に電話をかけて俺だよ俺今すぐ金持って来てくれって十年会ってない母親に電話かけ始めたな。
いや。そんなこたぁどうでもいい。
冷たい瞳のセックスワーカーロボットはジェイムズ氏を睨みつける。
「愚かな人間如きがこの私の眠りを妨げるつもりか?」
「はいあっち」
ジェイムズ氏はクースケを指さす。
「おい。なんで俺指さすんだジジイ」
ビリヤード台の上で立ち上がった女はジェイムズ氏の指に誘導されるままクースケに視線を移し。
台の上で四つん這いになり。
あ。弾みで胸が揺れた。ホントよくできてるなーこの乳房インプラント。
クースケの顔をマジマジと見つめると。
その瞳を赤くチカチカとロボットのように、実際ロボットなのだが、明滅させ。
「やっだぁ!貴方アタシの夫じゃなぁーーいっ!!!」
セックスワーカーロボットはクースケの首に抱き着いて来た。
「はいいいい?」
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