第31話

 ホームレス魔王の『物乞い』により、ギルドに必要な資金。資源は順調に増大していった。


「どうやら一応上限設定がされているらしい。65553が上限値だ。それ以上は資金も資源も増えない」


「もちろん乞食の筋力じゃそんなに持てないからギルド倉庫に納品するしかないわけだ」


「今はまだ狭いから直接倉庫に投げ込めるが施設を拡張していくとそうもいかなくなるぞ」


「考える必要があるな」


「しかしそういう拠点が大きくなるとやはり人間のプレイヤーが攻めて来るんじゃないか?」


「そりゃ防衛用の罠や手下モンスターを配置して迎撃するんだよ」


「ふむ。外観はやはりエジプトのピミラミッド墳墓風で。名前はカルナッ・・・」


「始皇帝陵にしろ」


 プレイヤーの中に中国人がいた。


「なに?どういうことだワニ魔王」


「ワニじゃない。我は竜魔王なるぞ。世界で最も偉大なる王の墳墓は始皇帝。その墓には財宝と、それを護る無数の罠があったとされる。水銀の流れる河。天井から流れる星々」


 なお、竜魔王は桃色の鱗であった。当人曰くコンロン山の仙人が食する仙桃をイメージしたとのことだ。


「ふむ。中華風の要塞か。悪くないな」


「ダンジョン内に人工の河川や森林を設置するのも面白そうだな。やってみるか」


「それだけではない。お前達にいいことを教えてやろう。漢字を発明したのは中国人なのだ。そして私は漢字を書くことができる」


「な、なんだって!!?」


 パンダ魔王は『偏差値』という漢字を紙に書いた。


「うおおおおおおおおおおおお!!!!すげえええええええええ!!!」


「いったいなんて書いてあるんだあああ!!!難しくて読めねえええええ!!」


「ふふふ。これは『へんさち』と書いてあるのだ。まぁ中国人ではない連中に。漢字を使わない民族はこれは読めないだろうがな」


「すげええええええ!!!へんさちって書いてあるのかよおお!!まったくよめねぇぜええええええええ!!!!」


「ふむ。では漢字を使う竜魔王よ。炎という漢字を紙に書いてくれ」


 鎧魔王はワニ魔王に漢字で炎を書くように頼んだ。なぜ自分で書かないかというと鎧魔王は日本人ではなかったからだ。つまり彼は漢字が得意ではないからだ。

 なお。別に漢字が書けないと言ってそれが即ち偏差値10を意味することは決してない。そんな評価をする奴は相手を侮るナロニメーションファンタジー世界の住人と同レベルと考えてよいであろう。

 ワニ魔王もとい竜魔王は炎という漢字を紙に書いた。


「次に廃課金魔王。床に追いたこの紙を踏んで見てくれ」


「そんなに俺様が羨ましいのか」


 廃課金魔王は炎と書かれている紙を踏んづけた。

 廃課金魔王は一瞬にして火だるまになった。


「ハイカキィーン!!」

「ぐあああああっっっーーー!!!」


「竜魔王。今度は雷という漢字を書いてくれ」


「うむ。雷だな」


 竜魔王は雷という漢字を書いた。


「次はこの漢字を踏んでみてくれ廃課金魔王」


「いいだろう」


 雷が落ちた。


「ぐあああああっっっーーー!!!」

「ハイカキィーンッッッーーー!!」


「今度は織田信長長篠戦火縄銃三弾撃と書いてくれ」


「うむ。少々長いが任せてくれ」


 竜魔王は織田信長長篠戦火縄銃三弾撃という文字を書いた。


「そしてこの漢字を踏んでみてくれ廃課金魔王」


「なんだこの意味不明な文字の羅列は?」


 廃課金魔王は織田信長長篠戦火縄銃三弾撃と書かれた紙をを踏んだ。

 大量の鉄砲玉が飛んできて廃課金魔王は穴だらけになった。


「ぐあああああああああっっーーーーーーーっ!!!!」

「ハイカキィーーーンッッ!!!!!」


「この漢字トラップは我々独自の固有の罠として使えるな。我々は回避できるが侵入者は引っかかってしまう。壁や床。天井。あるいは宝箱に漢字で書かれた紙を貼っておく。我々は罠を回避できるが漢字を読めない侵入者は引っかかってしまうという寸法だ」


「それは使えるな」


 一応時間が経つに連れ、経験則によりある程度この罠にも有効な対策が取られるようになった。

 しかし。


「魔力減少」


「魔術封印」


「技能禁止」


 こう言った紙が貼られた扉には、たとえその先に財宝があるにも関わらず、何故か侵入者たちは近寄ろうとしなかった。

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