バイオハザード・スラムシティ
第27話
「えーでは本日の講義ですが。セックスワーカーロボットのメンテナンスです」
ジェイムズ氏は『AKIRA』の店舗奥。ビリヤード台をベッド代わりにしてロボットの整備授業を行っていた。生徒はアロット・オブ・イッパイアッテナ。
「おい。爺さん。子供になんて事を学ばせているんだ」
「クースケ=クン。君はイッパイアッテナ=クンがセックスワーカーという職業になぜ憧れれてしまったか。その問題から学ぶ必要があるな。セックスワーカーと言う職業は不愉快だ。見るのも嫌だ。考えるも嫌だ。そもそも自分の国には存在しないことにしよう。公的機関がそう決定し、現実に市場として存在しているにも関わらずその事実を認めようとしない。これはネオジャパン政府の怠慢だ。由々しき事態だ。これはサムラァアーーーイがチョンマゲヘッドをしてカタナブレードを装備していた千年前の中世オールドジャパンエイジの頃からの事実なのだ。ユーカク・テーマパークというのが歴史上存在していたにも関わらず、子供にユーカクってなぁに?質問された際、ユーカクが登場する番組を放送するなとテレビ局に抗議の電話を入れる。それは自らの歴史を否定する行為なのだ。人類史そのものを焼却する行いなのだ。否定するのはあまりにも愚かな行為だ」
「もっとわかりやすく言ってくれよ」
「イッパイアッテナ=クンは街で綺麗な服を着て、暖かい部屋で暮らし、毎日ご馳走を食べて過ごす。そんなセックスワーカー達を見て暮らしていたストリートチルドレンなのだ。そんな彼女達がセックスワーカーに憧れるのは至極当然だろう。だから彼女を責めるのは良くない。責められるのはイッパイアッテナ=クンを。いや。彼女達のような子供達をそのような環境に追いやってしまった行政であり、ネオジャパン経済であり、政治家であり、官僚であり、即ちネオジャパンという国家そのものであり、そのような社会を構築してしまった我々大人の責任なのだ。故に私は自分が出来る範囲で彼女達のような子供を救う努力をしようと思う。お小遣いの範囲で」
「お小遣いの範囲なんかい」
「ま。私の財布もあまり大きくないんでね。全部は無理だ。授業を続けよう。ロボットの語源を知ってるかね?人間の代わりに働く存在だという事だ。つまりこれがどのように働くロボットなのか。それを知らねばならない。昔ある者がいった。ロボットには足なんていらんですよ。あんなんもんは飾りです。と。では問題だ。イッパイアッテナ=クン」
ビシッ!とビリヤードの棒でアロットを示すジェイムズ氏。
「なぜセックスワーカーロボットは二足歩行なのか?」
「誰も足がタイヤのロボットとはセックスしたくないからですっ!!」
「素晴らしい!!正解だよっ!!」
ジェイムズ氏は拍手した。
「そう!人類は誰もガンタンクとセックスなどしたくはないのだっ!!それは人間の本質であり、おそらく人類が宇宙移民を開始し、スペースコロニーを造ってそこで暮らし始め、百年くらい経過する!!それでもやはり人類は変わらずこういうはずだっ!!人間はガンタンクとセックスしたくないとっ!!クースケ=クン。君はどうなのかね?タイヤでいいのかね?君はアメリカ人なのかね?アメリカ人は車の排気口に挿入してセックスするという。これをカーセックスという。故にアメリカ人はガソリン車を手放すことができないのだ」
「いやそれアメリカ人に対する偏見じゃね?てか俺アメリカ人じゃねぇし」
「ともかくこのセックスワーカーロボットには非常に優れたバランサーが搭載されている。証拠品としてクラウズ=クンに提出したパーツも含め各所のボディもかなりの良品だ。非戦闘用の民生品であるという事を考えると素晴らしい耐久性がある。使用したら全身酸性溶剤のプールにぶち込んで丸洗い出し要所の部品は外して交換してもいい。実に衛生的だ。まぁ耐久性はあっても頑丈ではないんでね。拳銃の弾でも打ち込めば簡単に壊れるぞ」
「なー。こいつ人間の皮と髪の毛あるぞ?」
「改めて被膜と人工毛をつけ直した。風俗店のコンピュータに残されたデータからどのような外見だったかは簡単に調べられる。それにヘッドメモリを再現する前に人工皮膚を移植しておいた方が。もしかすると安全だ」
「どういうことだ?」
「そりゃ自分が朝起きた時ゾンビになってたら普通の人間は驚くだろう。それこそ電源を入れた途端暴れ出しかねんからな。その為の予防措置だ。じゃあ行くぞ」
ジェイムズ氏は人形の電源を入れた。
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