第24話

「クースケ=サン。大丈夫ですか?」


 開らきっぱなしの取調室に、光沢のあるゴム被膜制のブラとショーツ。グローブとブーツ姿のコルデーが入ってきた。


「あー。空腹以外は全くもって問題ねぇぜコルデー=サン」


 クースケは力なく答える。


「それよりもそんな恰好でどうやってここまで来た?ここ警備署の取調室だぞ?通風孔を通って来たのか?」


「えっ?もちろん正面玄関口からですよ?」


「ここまで来れるの?その恰好で?」


「はい。クースケ=サンこそこの鍵の開いた取調室から出ないんですか?」


「この部屋にも外の廊下にも。階段の所にも。踊り場。トイレにも監視カメラはあるぜ。上下階にはポリ公が大勢。市民の味方のクラウズ=サンが自慢してたぜ。この建物はテロ攻撃に備え、対戦車弾頭の直撃を受ける事を前提にした外壁になってるってな」


「そうでしたか。実は私。慌ててお店出て来たんでうっかり護身用の武器置いてくるのを忘れちゃいまして」


 っと。太ももに括り付けてある拳銃を触るコルデー。


「よく通して貰えたな」


「まぁ身体検査の所で顔なじみの都市警備の方に粗品をお渡したらこれくらいは見逃して頂けました。それよりもクースケ=サン。殺人罪という事ですが」


「ああ。今朝ゴミ収集してる時に俺が追剥(ハイウェイマン)二人組に襲われたんだが。そいつらがきちっとした企業に勤めているサラリィマンで俺が殺したことになっているんだ」


「殺しちゃったんですか?善良な一般市民を?」


「正当防衛で追っ払っただけだぜ。今の俺みたく腹を空かせてるだろうとサンドイッチをくれてやったらいきなり殴りかかってきやがったんだ」


「それってこれの事ですか?」


 コルデーは持っていた鞄の中から泥水のついた紙袋を出した。


「ああ。そいつだ」


「やっぱり。そうでしたか」


 コルデーは念のための確認を終えると、クースケと終える事にした。


「じゃあ私は帰りますね」


「おー。達者でなー」


 クースケは調書を書くための机に突っ伏すと力なく手を振った。

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