第23話

 クラウズが都市警備署建物階段を駆け下り、廊下を走っていくと。

『AKIRA』のエプロンドレスを身に着け、青い薔薇のついた黒いバケットハットをかぶった女性がボディチェックを受けていた。


「貴様ら!何をしているっ!!」


 クラウズは部下に対し怒鳴り散らした。


「はっ。この夫人が凶悪な殺人犯と面会したいというので身体検査を」


 彼らのしているのはちゃんと既定に乗っ取った行為である。


「それは私がやるっ!お前達は持ち場に戻れっ!!」


「はい」


 クラウズは部下を追い散らした。


「申し訳ございませんコルデー=サン。部下が貴方に対して大変なご無礼をしたようでして」


「いえ。これから警備署の建物内を歩くのですし、ちゃんと身体検査をしていだかないと。ではお願い致ししますね。クラウズ=サン」


 コルデーはクラウズの両手を掴むと、自分の尻を触らせた。それからゆっくりと。徐々に。上半身に。身体の前方の方に移動させた。


「特にこの辺り。ですね。女性は胸の谷間に刃物とか隠す事ができますので。何か危険なものはありましたか」


「い、いえいえいえいいいいええええっっっ!!!!!そのようなものはっっ!!!

もちろん――――!・・・イヤ・・・身体検査の結果・・・貴方は・・・何も・・・なんの危険物も!!持っていませんでしたあああああああああぁぁぁぁぁ!!」


「あ。でもこちらは持って来ているんです」


 コルデーは鞄の中からお弁当箱を取り出した。


「水あめを使用していないオーガニックチーズベーコン弁当です。あ、でもチーズをのせてしまったのは失敗でしたでしょうか。冷めてしまったら美味しくないかもしれませんね」


「ダイジョブです!実はお腹ペコペコでして!!今すぐご馳走になりまっすっ!!」


 三十分前に長時間の取り調べもできるよう昼食を済ませたはずのクラウズはコルデーからオーガニックチーズベーコン弁当を受け取ると、満面の微笑みを浮かべながら食堂へとスキップしていった。


「そうだ。クースケ=サンと面会したいのですが」


「階段昇って突き当りの部屋です!面会時間は三十分以内でお願いしますっ!!」


「ありがとうございます。クラウズ=サン」

「どういたしましてコルデー=サンーー!!」


 コルデーはクラウズに頭を下げると、警備署の階段を登って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る