第22話
都市警備の取り調べ室において、クースケはクラウズの取り調べを受けていた。
「さて。スズキ・クースケ=サン。貴様の罪状だが」
クラウズは机の上に『AKIRA』と書かれたお持ち帰り用の紙袋を置いた。中に入っているものを取り出す。
「これらは貴様の罪状を示す証拠品の数々だ。これはコルデー=サンの焼いたトースト。そしてコルデー=サンの造ったサラダ。コルデー=サンの焼いた目玉焼き。持ち運びやすいようになんとサンドイッチ状に造り直してある。なんという料理上手なんだコルデー=サンは。そしてこのボトルにはコルデー=サンが煎れてくれたコーヒーが入っている。サッカリーンと脱脂粉乳付だ。なんという心遣い。流石はコルデー=サンだ」
「おうおう。クラウズ=サンよぉ。それ俺の朝飯なんだよ。早く食わしてくれよ」
なおもうお昼はとっくに過ぎている。
「なんだと!?クースケ=サン。まさか貴様コルデー=サンの造ったこのサンドイッチを食べるつもりだったのか?」
クラウズはサンドイッチを『AKIRA』の紙袋の中に入れると、素早く自分の鞄の中に詰めた。
「クースケ=サン。貴様はやはり第一級殺人罪に相当する。絞首刑だ。銃殺だ。火刑だ。遺体はゴミと一緒に焼却炉に放り込んでやる。作業は俺が責任を持っておこなってやろう」
「おいおいクラウズ=サン。くだらんコントはやめよーぜ。マジモンの罪状がなけりゃー帰らせてもらうぞ?」
「マジモンの罪状ならある」
クラウズは写真を二枚。クースケに見せた。
「善良な市民が二名。今朝貴様に殺害された。心当たりがあるだろう」
「善良な市民?そんなものは」
ない。と言いかけてから。
二名。今朝。というキーワードの方には心当たりがあった。
「善良じゃない市民となら。出くわしたけど」
「いや。貴様が殺害したのは善良な市民だ。ゲーム会社に勤務する真っ当な会社員だ。クースケ=サン。お前は彼らを一方的に殴りつけ、無慈悲に殺害したのだ」
「何言ってんだ。襲ってきたのはそいつらの方だぜ。俺は反撃してきただけだ」
「ほう?ではそれを証明する人物は?証拠品でもあるのか?」
「それは・・・」
ゴミ収集していた際は雨だった。周囲には誰もいなかった。もちろん監視カメラのようなものもなかった。
「ふん。それ見ろ。やはり貴様が殺していたようだな」
「だから殺してねーてっ」
その時、取調室の壁に備え付けられている固定電話がなった。
「ちょっと待て」
クラウズは壁に設置された固定電話を取った。
「現在凶悪な殺人犯の取り調べ中だぞ。不用意に電話をかけるなと。なにっ!!どうしてもっと早く連絡しなかったっ!!!すぐ行く!!!」
クラウズは受話器を置くと。
「貴様の取り調べは後回しだ。急用ができた。せいぜい首を洗って待っているんだなっ!!」
クラウズは取調室を出ると、扉にロックをかけるのも忘れて大急ぎで廊下を走って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます