第11話


 ジェイムズ氏はクースケにバンドエイドを張って応急処置をしてから話を続ける。


「ヘリコプターの運航会社はこのように提案する。業績を伸ばしたい。しかし運輸省の許可が必要だろう。何せ人間を乗せた金属の塊が空を飛び回るのだからな。万一にも住宅地に落ちたら大惨事だ」


「まあそりゃそうだろうな」


「整備費用、ヘリコプターの運転手代もかかると説明する。それからこのようにいうのだ。どうでしょう。弊社のヘリコプターを利用した事にしてください。実在は車で移動しますが領収書は発行します。代金を貴方と私でヤマワケします」


「へっ?なにそれ」


「お金の出本は外交官の国の税金だよ。つまり外交官はレンタカーでドライブした後、ヘリコプターの領収書を持って清算すると、自分の銀行に額面の半額が振り込まれるんだ」


「いいのかよそれっ!!」


「公文書偽造品とか業務状横領とかになりそうだよね。まぁそういう連中って自分の国の国民の税金を自分の財布に入れられればそれで幸せな奴らが多いから喜んで応じちゃうんだよ」


 話の途中なのにジェイムズ=サンはスマートフォンを取り出してニュースを見始めた。


「オーイズミ環境大臣!これは何ですか?!」


「えーそれは広告代理店に発注したプルトニウムの安全性を国民に周知するプルトニウム君です」


「このキャラクターのデザインにいくら使ったのですか?」


 フリップを持って質問する野党議員に対し、環境大臣は答える。


「えー三億新円と伺っております」


「おい爺さん。なに携帯取り出してテレビ見てんだ。話途中だぞ」


「おっとすまんすまん。ただどこの国のどこの役人でも同じようなことをしていると思ってね」


 ジェイムズは携帯をしまった。


「斯様な上級国民。役人は一般庶民とはまったく違う行動を取る事が多いんだ。例えばクースケ=クン。君が目的地まで行く場合、どの様な順路で行くのかね?」


「え?そりゃ最短距離じゃねぇの」


 普段のゴミ収集車の仕事を思い浮かべながらクースケは思った。


「だが彼らはカーナビのタッチパネルを操作する際、高速道路でも一般道路を最速でも。そのいずれも選択しない」


「じゃあどうするんだ?その場で車は停止したままか?」


「景色を楽しむ。を選択しながら案内を開始してしまう!!」


「どうしてネオイバラギ空港まで楽しいドライブを始めてしまうんだっ!!」


「仕方がない。なぜならばネオナリタ方面は首都高速。つまり一年三百六十五日渋滞している。だがネオイバラギ空港は地方。田舎なのだ。道路は空いている。さらに一般道を走るのだ。高速道路ではなく、な。彼らはスポーツカーの爆音を住宅地を走りたいのだ」


「なんでそんな事をするんだっ!!そんな事をしたらみんなの迷惑になるじゃないかっ!!」


「彼らはそれが目的なのだ。平日学校にランドセルを背負って学校に向かう子供たちの脇を掠め、昼間はセメントの袋を担いで運ぶ工事作業者を掠め、そして夜間は昼間の疲れを睡眠で取ろうとする人々を轟音と雑音を奏でる車載スピーカーで妨害する。それが彼らの目的なのだ」


「なんだとっ!真面目に日々のささやかな暮らしをしようとするみんなを苦しめて何が楽しいって言うんだっ!!」


「程度としてはナロニメーションファンタジーアニメと変わらんのだよ。異世界の人々を苦しめるか。現実世界の人々を苦しめるかの違いでしかないのだ。そして住宅地を経由した彼らは景色の良い場所。即ち桜の名所であるネオゴンゲンザカ公園を経由ルートを選択してしまう」


「速度を重視して真っ直ぐネオイバラギ空港に向えばやられなかったのにっ!!」

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