第8話
ネオゴンゲンザカ。早朝。
一台の車がネオイバラキ方面に向けて走っていた。
あの車に放火犯が乗っている。
予定通りに手押し信号機の押しボタンを押して信号を赤に変える。これで車は止まる。
止まらない。むしろ加速した。
周囲に人影もない。人里から離れているため、遠慮なくスピードを出しているのだ。当然信号も無視である。
もちろん。透明人間になったコルデーの姿も見えてはいないだろう。
逃がすものか。規則正しくアスファルトに揺られるだけのタイヤ目がけて銃の引き金を引いた。
「へいコルデー!アメリカ人は銃を持つ権利があるのさっ!いやすべてのアメリカ人は銃を持つ義務があるのさっ!!銃はアメリカ人を守ってくれるのさっ!!」
太った父親の言っていることは本当だった。発射された弾丸はタイヤに吸い込まれていく。そして制御を失った車両はそのまま道路わきの電柱に激突。停止した。フロントガラス越し運転席に血まみれの男が見える。清潔感のあるスーツを着ている。大使館員だろうか。
「ああっ!くそっ!!」
ほぼ無傷の男が飛び出していく。白人男性。違う。お前が死ななければ意味がない。
コルデーは男を追いかけて行った。
男はネオゴンゲンザカ公園の中を走って行く。
歩幅のせいだろうか。男の方が足が速い。徐々に距離が離されていく。
逃がすものか。コルデーは銃を発砲した。
男は足を止めて振り向いた。
ゆっくりとコルデーは近づいて行く。
大丈夫だ。自分は透明なのだ。あのジェイムズとかいう手術によって。
「っふふふふ。くくくく。ふふゃはははははははああああ!!!!」
男は盛大に笑い出した。そして拳銃を取り出すと。
撃った。
命中。
「ぐっ!?」
まぐれ当たりだろうか。
緩まる指に力を込め、改めて狙いを定め。
撃ったのはまたもや男の方だった。
二発。三発。四発。
すべて命中。
コルデーは熱傷により焼失した皮膚の代わりに硬質プラスチックと金属繊維の組み合わせで造られた人工皮膚でその表皮を覆っている。即ち彼女は全身を対弾効果のあるアーマー・ジャケットで覆っているのようなものだ。
そうでなければウォーホークの一撃で腕をもぎ取られていただろう。
おい。それ軍用の大口径拳銃だろ。装甲車に穴開けられるタイプだろ。ネオサイタマじゃ売ってないぞ。なんでもってんだよ。
皮膚装甲に銃弾をめり込ませ、膝をつくコルデー。
「なんで俺の弾が全部当たるのか教えてやろうかカメレオンさんよぉ?周囲をよく見てみるんだな」
コルデーは周りを見た。
ネオゴンゲザカ公園の中。美しい。春の風物詩。桜が舞い散っていた。
「負け犬さんに負けた理由を教えてやるよ。それはこの国に四季があるからだあぁ!!!」
男はコルデーの額がある辺りに。透明な彼女の桜の花びらを頼りに狙いを定め。
「ぐおっ!!?」
その顔にゴミ袋が被せられた。
「チィース。ゴミ収集車の運転手です」
ゴミ袋を顔から引きはがそうと男。あがいている間にクースケはコルデーが落とした銃を拾うと引き金を引いた。
男はサイボーグではないので9ミリパラペラム弾一発で死んだ。
「爺さんは二発撃てって言ってたな。心臓撃ったら頭だっけ」
なぜそんな事をするのか。理由はわからない。まぁ相手は悪党なんだし別に多く撃っても問題なんだろう。
「どうして・・・ここに?」
コルデーは尋ねた。
「爺さんに頼まれたんだよ。お前を手伝ってやれってな。実際役に立っただろ?」
クースケは答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます