第6話

 数日後。

 病室で目覚めたコルデーの眼の前に椅子に座って居眠りするクースケがいた。

 彼は毎週月曜。水曜。金曜を覗く日に訪れ、彼女を見舞い、リハビリを手伝った。テレビ報道でネオサイタマ都市警備により外国籍の犯人が逮捕された事も知った。

 包帯と取った際、自分の顔が幼稚園の保母のそれになっていたが、それは所持していた免許証を頼りに再現したからであると説明されたので納得した。あとで整形し直すとも言われた。

 この時点で彼女は気づくべきだったのだ。

 園児八十二名。教員四名が全員焼死しているという事実に。

 さらに。携帯のニュースまとめサイトを見て。

 知ってしまった。


『外国籍の犯人無罪放免だってさwww』

『無罪じゃねーよ。大使館の必死の努力のお蔭で国外追放処分』

『どの道幼稚園児無駄死にwww』

『法治国家www』


 衝動的に病室にあったリンゴの皮を剥くための果物のナイフで手首を切ろうとした。

 力を込める。

 硬い音がして。

 刃が折れた。

 ナイフの。


「おーい。爺さん。なんか例の生物兵器造る装置で治療した影響じゃねーのか?コルデー=サンの様子が変だぞ」


 いつものように見舞いに来ていたクースケが携帯をかけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る