第16話 見守り隊
ここは迷宮都市ユバ。
ここに1つの志を持つ仲間が集まった。老いも若きも男も女も関係ない。
只々その光に誘われ、光と戯れ、光に恋をする。
儚く愚かな者達よ。
今日も集いしその者たちの名は。
『ユマちゃん見守り隊』
No.1「今ユバの街が大変な好景気に沸いています。物はあふれ人が集まり、治安も一部を除いて向上しています。そしてその中心にいるのはなんと我らが、ユマちゃんなのです」
No.4「それではお配りしました資料を、ご覧ください。ユマちゃん周辺でみられる、経済効果及び環境の変化が載せてあります」
①ユマちゃんの行動範囲及び周辺で、見守り隊による危険分子の排除、それによる治安向上
②ユマちゃん見たさに人が集まる
③ユマちゃんに良い所を見せたくて店の商品を爆買いする人、続出
④上記と同じ理由で、人に親切にする行動が激増
⑤集まった者たちの中で、この好景気による人手不足の店舗へ就職が決定した者、多数
⑥お年寄りも一目見ようと出かけるので、元気になり寿命も伸びています
No.11「素晴らしい、ユマ様。まさに女神です」
No.2「ははは、どっかのボンクラ領主にはできないことですなー」
No.19「あ~ん? なんだって~、おめぇに何がわかんだよ? そんな簡単にポンポンなんでも良くなるって大変なんだぞコラ!」
No.2「簡単にしているユマちゃんを見習うべきじゃないですかね」
No.19「テメェ、表でろ!」
No.1「2人ともほどほどにね! No.4他に何かあるかね?」
No.4「はい、こんなお手紙も届いております。PN. 嬉しい母 さんからです」
〝みなさん、こんにちは。お礼の手紙です。ユウマさんのおかげで12年間、引きこもっていた息子が外に出てくれました。そして3日前、仕事を決めてきたぞと、小さな声ですが教えてくれたのです。会話も久しぶりで、嬉しくて本当に感謝しております。ありがとうございました〞
No.4「いいお話ですね」
No.19「そこまで影響があるとは……素晴らしい」
No.2「ふん」
No.19「チッ……!」
No.13「…………」
No.4「続いて、PN. ポンポコペー さんからです」
〝先日寝たきりの母親に、ユウマちゃんを見せようと思い外へ連れてきました。でもユマちゃんは見つからず母をその場において探していました。なかなか見つからず母の所まで戻ろうとしました。そうしたら、そこにはなんとユマちゃんに手を取られ道路を渡る母の姿があったのです。しかも次の日から、ユマちゃん見たさに自分の足で出かけていくのです。これは奇跡です、この奇跡を皆さんにも伝えてください。ありがとう〞
No.4「お母さん良かったですね。ユマちゃんの優しさが溢れるエピソードでした。続いて次のお便りです。PN. 本人 さんからです」
〝僕はユマちゃんです。どうか皆さん僕のことは放っておいてください。僕には決まった人がいるのです。ジミーさんしかいないんです。もう関わらないでください。さようなら〞
No.4「完璧に偽物ですね! 成敗しておきましょう」
No.1「うむ、きっちりと躾けておくぞ! 居場所は突き止めてあるのか?」
No.4「はいバッチリです。今頃部隊が踏み込んでいる頃です」
会員「ぬぬぬぬ、ユマちゃんに決まった人がいるなんて、ウソだーー!」
No.4「だから、こいつは偽物で、ジミー本人ですよ」
会員「ぬぬぬーー! ここは潔く身を引くべきか、それとも玉砕テロをするべきか……うおー!!」
No.4「オイッ!!」
No.1「そいつも躾るぞ…………何にせよ、これだけの影響力、さすがユマちゃんだ」
そんなバカな会話をしている同時刻。
ユウマはハンナと会っていた。
先程裏通りのアパートで大捕物があったみたいで、周囲に気を配りながら会っている。
騒動はすぐに終わり大事には至らなかったみたいだけど、
ユウマはなんで今日なんだと、心の中で悪態をついてしまう。
というのも今日はハンナの誕生日で、プレゼントを渡すため2人は会っているのだ。
あらかじめ、ユウマがその旨を伝えてあるし、
互いにドキドキしながら、通りのベンチで座って話をしている。
ユウマは駆け出しの冒険者ではあるけど、精一杯のものを用意していた。
包みの中は、シンプルだが可愛いデザインの髪留めが2つ。
「ハンナの髪の色に似合うと思ってさ、君の髪は綺麗だからつけてくれると嬉しいな」
喜んでつけてみるハンナ。
ちょっと照れくさそうに笑っている。
「ありがとう……どう、似合うかしら?」
幸せな時間だ。
こちらに来て半年も経つが、何1つ日本へ帰る手掛かりは掴めていない。
焦る気持ちでいっぱいだ。
だけどハンナとこうしている時だけは、そのことを忘れることができる。
人生初のプレゼントを渡す相手がハンナでよかった。
それ以外では母や姉であったことを思い出す。
「どうしたの、ユウマ君? 何か嫌なことでもあったの?」
「ううん、違うんだ。
前にも話した家族の事なんだ。
父さん、母さんとお姉ちゃんの3人はね、実はハンナと同じこの12月の誕生日なんだ。
5日、10日、15日とバラバラだけど、いつも毎年3人まとめてお祝いするから、
不満ばかり言っていたのを思い出してね」
「じゃあ私もユウマ君の家族に会えたら、まとめて祝ってもらえるかしら?」
「うん、賑やかになって楽しいと思うよ。
みんなもそれを喜んでくれるはずさ」
ジョークのつもりで言った何気ない一言へ、返ってきた言葉に赤くなるハンナ。
そしてその反応に、やらかしてしまったと慌てるユウマ。
途中までは良かったのに、年相応のふたりである。
「来年も一緒に祝おうね、ハンナ」
なんとか、搾り出せたその一言に、黙って頷いている彼女を見て、
その姿がまた愛おしいと思うユウマだった。
「ぼくだよー、ジミーだよー、助けてー」
「ちゃんと躾てやるからな、覚悟しろよ」
変な雑音も響いてくるが2人の耳には入らない。それほど幸せな時間なのだ。
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