だい〝じゅうよん〟わ【『新撰組』に断られゲームオーバー?】
さて、放課後になるや新見さんが放送で呼び出される。呼び出し名は山口先輩。まあ呼び出されると言ってもその場所は職員室だからそうは怖くはないとは思うけど。
今度は僕と徳大寺さんのコンビが様子を密かに窺う組になる。場所が職員室なので先生たちから「上手くまとまれそうか」とかなんとか声を掛けられてハズい。
僕としては同好会設立ルールの急変更について先生たちに怒っているんだけれども、先生たちには特段ひどいことをしているというつもりは無いみたいだ。もっとも、僕たちみたいのが職員室で遊ぶ(?)のを容認している(?)くらいだから、自分たちが無茶なルール変更を要求したという自覚くらいはあるということなのだろうか。
山口先輩の方へと歩いて行く一人の女子。おそらくあれが〝新見さん〟。
フルネーム『新見にしき』さん、僕と同学年、二年。クラスは別々で同じクラスになったこともないのでどんなコかは分からない。特徴、髪型が丸い。なんだろう、うまく表現できない。お習字の筆のその先端を丸るく切ったようなそういう『せみろんぐ』な髪型の女子。
主催する同好会の名前はズバリ『新選組』。これほど分かりやすい名前もない。
山口先輩に接触した。間違いない。
あれ?
新見さんは来るなり山口先輩にぺこぺこぺこぺこ頭を下げている。なんでだろ? そうこうするうちにあっという間に職員室を出て行ってしまった。山口先輩もとりつく島もないといった感じ。
塾へ行く用事でもあるのだろうか? そんなことを考えていると山口先輩がこちらの方へつかつか歩いてくる。
「どうしたんです?」反射的に訊いていた。
「フラれた」
「え?」
「『どうしても合併しなきゃだめでしょうか?』だって。まったくっ、だから〝ぼっち〟なのよ!」
いやぁそれ言ったら独りで同好会なんて登録していたパイセンも同じなんですけど——。と、内心でだけ思ってしまう。
「上級生が相手では怖かったんだろうか?」そこいら辺り僕も心情として心当たりは無いことはない。
「本当に怖かったら断れないはずよね」と山口先輩。
確かにそれもそうだ。続けてまた山口先輩が言う。
「ひとが誘ってあげてるのに断られるなんて精神的にこたえるわぁ」と。
「この後どうするんです?」僕が尋ねた。
「ここでは勘弁して」と山口先輩、「——昨日と同じところで続きを考えようよ」と続けて言った。
まあ放課後には特に用事が無い。三人揃って職員室を出る。
僕たち三人は職員室を出て市の図書館へといっしょに歩いている。重い話しだが言わねばならない。
「もうこの後の行動に意味があるんだろうか?」と言った。誰に訊くともなく。
「人数のこと……だよね? もう最大限集めても四人が限度で新規定に足りないっていう——」徳大寺さんが答えた。気づいていたんだ。
「——一応わたしも数のうちに入れてもそれでも一人足りない」さらにそうダメを押してくれた。
「私に声を掛けておきながら今さらやめるっての?」山口先輩が言う。
ぶしつけと思ったが問うてみたくなった。
「けど今までひとりでやってきて、どうして先輩は今になって集団なんかにこだわろうとしているんですか?」
「バカッなにをっ!」徳大寺さんの声が飛んできた。
「こだわっているのは今川くんも同じじゃないの?」山口先輩が反撃してきた。
「同じですけどあくまで五人が前提ですよ」そう答えた。
「前提ね」
「残るひとりは上伊集院さんでしたっけ? 徳大寺さんも言ってた通りその人に声を掛けても五人揃わないんですよ。なにもできない人数しか集められないのが分かっていてなんの目的で声をかけるんです?」これは言わざるを得ない。
「声を掛けていないのが彼女だけだからよ」山口先輩は言った。
ハッとする僕。それは徳大寺さんも同じだったみたい。そういうのが表情で分かる。ひとりにだけ声を掛けないなんて、そんなの良くない。『無駄』のひと言でその良くないことをやろうとしてた。ぱっと見〝不良〟だなんて思っちゃったけど、それは違ってた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます