第30話 オーロラ・アイト

闘技場の選手控え室でローラちゃんと楽しそうに話している二人の元へ近づき、リアンは女の人の肩を掴み、壁に押し付ける。

すると、その女性も始めは怒るような表情を浮かべたが、リアンの顔を見るなりニヤニヤと笑い始める。


「あら、急に肩を掴むものだから誰かと思えば、リアンちゃんじゃない。お久しぶりね」

「できればあなたとは二度と会いたくなかったわ、オーロラ」


リアンがオーロラを掴んでいた手を離すと、ローラがオーロラの元へ駆け寄った。

その様子を見た時、リアンは落ち込んだ表情をし、オーロラはニヤニヤと笑っている。

突然現れたオーロラ。その正体は裏闘技場のオーナであり、そしてローラの育ての母。

だからこそローラは、リアンよりもオーロラへの心配が優先してしまう。

ショックを受けていたリアンだが、正気を取り戻し、オーロラがなぜこの場にいるのかを尋ねる。

すると、オーロラが言うには最近この国での裏闘技場の頻度が増加しており、不審に思った為、潜入調査をするためにこの国にやってきたという。

その時に、たまたまローラと再開し二人でこの国の闘技場を乗っ取り、全貌を暴こうとしたという。


「それで、結果はどうだったの?」

「それがねぇ、不思議なことが山ほどあったわ。死体を置く場所がないし、血の匂いもない。そればかりか担架もない。おかしいと思わない?ここは裏の闘技場で、人が死ぬのよ?」

「もしかしてここでも」

「何か思い当たる節でもあるの?」

「実は・・・」


リアンはリザレストーンのことを全てオーロラに話した。

すると、オーロラはしばらく考えた後、笑みを浮かべた。

オーロラはローラの部屋に置いてあった小さな鞄を手に取ると、二人についてくるように命じる。

三人が向かう先は先ほどアストのいた特等席。つまり国王のいる場所だ。

部屋の前に着くと、中で談笑をしている声が聞こえる。

その雰囲気に対して躊躇なくオーロラは中に入り込む。

突然中に来た不審者に驚き、アストは勢いよく席を立つ。


「お、お前達は一体何者だ!」

「私はオーロラ・アイト。この世界で生きているのなら当然知っているでしょう?」

「な、なんだと!?なぜあなたがここに」

「最近ここの様子がおかしいってタレコミがあってね。だから調べさせてもらったわ」

「くっ・・・だが、バレてしまった以上は生きては帰さぬぞ!!」


アストが机の裏に手を伸ばしボタンを触ると、三人の足場が突然開き、どこかへ落とされてしまった。

目の前は暗闇だったが、突然当たりが光に包まれる。

そしてその光の中から出てきたのは通常の何倍ものサイズのあるキマイラが悠々と歩いてくる。

キマイラの奥を見ていると、そこにはスクリーンがあり、アストの顔が大きく映っていた。


「そいつは私が飼っているキマイラでな、たまにこうして餌をやっているんだ。おかげで人間の味を覚えたようで人間を見るなり八つ裂きにして食べてしまうんだ。私はこれを見るののが一番大好きでな。さぁ、お前達もキマイラの餌となってしまえ!!!」


キマイラは息を吸い込むと大きな鳴き声を上げる。辺りが揺れるほどに響く咆哮。

こいつを一体どうやって倒せばいいの・・・?

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