第29話 ラロード

闘技場の中心に仁王立ちしているラロード。闘技場の左右の入り口から次々と人々が出て来る。

そして一人の男がラロードの元へ近付くと、その瞬間男の首が中心から飛び出し、闘技場の隅に転がった。

闘技場にいる全員がその落ちた首を見ている隙にラロードは姿を消し、次の標的に狙いを定め一人、また一人と首を落としてゆく。

あまりの早さに審判も混乱し、早く控えている選手を出すように指示を出す。

しかし、そんなことは御構い無しにラロードは暴れ続ける。

あたりには血の匂いが濃く広がり、感染している人々も何も言葉を発さず、ただこの地獄絵図のような光景を見つめていた。

特等席で見ていたアストも顔を白くし、ボソリと「化け物・・・」と呟く。

リアンは、この光景をただただ見つめるしかなかった。おとなしく見ていると約束してしまったから。

ラロードは段々とヒートアップし、より攻撃のスピードが速くなっている。

もはやラロードの近くには誰も近づけていない。否、近付くと殺されてしまう。

その恐怖心からか、闘技場から逃げ出そうとするものもいたが、そういった人々はもれなくラロードの魔法の餌食になった。

ラロードが使用している魔法はごく一般的な中級魔法だが、それに追撃魔法も加えているため、逃げようとすれば、そのまま魔法によって殺される。

つまり、今闘技場にいればラロードによって殺されるか、魔法によって死ぬかの二択である。

試合も進んで行き、気がつけばあたりは血の海に染まり、観客から悲鳴も漏れ始める。

いつの間にか死体の山が形成され、最後の一人をやり終えると、闘技場の中心で右腕を上げ、勝利を確信させた。

それに気がついた審判は急いでマイクを取り、結果を報告する。


「ひ、百人組手勝者、ラロード!!!」


それを聞くとラロードは、死体の山から降り、闘技場から出て行く。

ラロードが勝利を決めた時、誰一人として拍手や歓声をあげることがなかった。

それほど圧倒的に強く、そしてその強さに恐怖しか感じることができなかった。

ラロードが試合を終えると、リアンは急いで選手の控え室へ向かう。

すると、目の前でリアンはとんでもないものを目にする。

それはかつて、ローラを購入し闘技場選手ラロードとして育て上げたローラの育ての母であり、奴隷商人兼死霊魔術師、オーロラ・アイト

数年前に殺害されたはずの彼女が何故ここに。

どうして、私のローラちゃんとそんなに楽しそうに会話してるのよ・・・!

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