第23話 アベン

アベンが指を鳴らすと同時に地中から飛び出してきた二体の魔物、ローラ達は臨戦態勢を取る。

キングサーペントとジュエルウルフ、どちらも油断できない強敵である。

が、それはAランク未満の冒険者に限った話で、ローラ達二人にとっては造作もないもの。

二人は別々に飛び散ると、ローラがキングサーペントとジュエルウルフ両方の前に立ち、腰の鞘から刀を抜く。

その刀をアベンはうっとりするような目で見つめている。

ローラが刀を上に掲げ、腰の高さまで下ろした瞬間視界からローラの姿が消えた。

魔物達があたりを見回しながら警戒していたが、気がつく頃にはキングサーペントの目の前に現れ、全身を切り裂かれる。

ジュエルウルフは本能でその場から立ち去ろうとしていたが、離れたところで隠れていたリアンの魔法によって仕留められてしまう。

ローラは刀を鞘にしまうと、アベンの元へ近づく。

用意していた魔物をこうもあっさり倒されると思っていなかったアベンは怒りで肩を震わせていた。


「どうしてだ、僕はやっと魔物を蘇生させることができるようになったのに、たったこれだけ?このままじゃ昔と何も変わらない・・・」


が、ローラ達が近づいてきた時に狂ったように笑い始めた。


「そうだ、どうせもう僕は終わりなんだ!ならせめて最後の悪あがきをさせてもらうよ!!!」


そういうと、アベンは服の内ポケットからリザレストーンを取り出し、地面に思いっきり叩きつける。

すると突然、地面が大きく揺れ始めた。地中が震え、地面が割れ始める。

地割れのひびの中から鉤爪が見え始める。

バキバキと木々が壊れる音が聞こえ、あたりにいた動物達は皆逃げ始めた。

地中から蘇ってきたのは、その昔、いくつもの国を滅ぼし暴れてきた伝説の龍。

『滅龍』バハムート

誰もが知っている災厄が再びこの世に舞い戻る。

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