第19話 キングサーペント

キングサーペントと対峙する三人、お互いが見つめ合いながらじっと隙を伺い続けていると、クリソが飛び出し先制攻撃を仕掛ける。

キングサーペントの尻尾に向かって斬撃を繰り出す。しかし、クリソが振り下ろした斬撃は尻尾に受け止められ、そのまま近くの岩に弾き飛ばされた。

凄まじい衝撃と共に岩に叩きつけられたクリソは、目の前にいるキングサーペントを見ると手の震えが止まらなくなる。

今まで経験したことのない恐怖、痛み、そして何よりもキングサーペントの威圧感。

クリソはいつの間にか持っていた剣を手放し、ただ呆然とそこに座り込んだまま動かなくなってしまった。

それを好機と感じたキングサーペントはクリソとの距離を一気に縮め、大きく口を開ける。

動かなくなったクリソを捕食しようとしていたその時、先程までそこにいたはずのクリソが消えていた。

ローラが一瞬の隙をつきギリギリでクリソを奪還できた。キングサーペントも捕食対象が急に消えたことに混乱している。

が、目の前に新たに人が出てきたことに喜びを覚え、再び捕食をしようとするが、その瞬間キングサーペントはリアンの魔法によって動けなくなってしまった。

ローラがクリソを遠く離れたところに座らせると、右頬に思いっきりビンタを食らわせる。

その衝撃でクリソも我に返る。手や足などの震えはない。だが、思い出すたびに震えが止まらなくなる。

そんなクリソに苛立ちを覚えたローラは思いっきり大きな声で叫んだ。


「あなたはそんなに弱い騎士だったの!?正直がっかりだわ!!」

「で、でもあんなに強い敵は初めてなんだ・・・俺の技も全く歯が立たない、今までたくさんの魔物と戦って来たが、あいつは訳が違う!!」

「だからどうしたのよ、そんなの戦わない理由にはならないわ!私達だってはじめから強い訳じゃなかった。でも、最後まで諦めずに戦った。それが依頼を受けた人の役目だから。あなたも騎士なのでしょう?なら、頼まれた仕事ぐらいちゃんとやって欲しいものね」

「だが、俺にはもう戦う勇気が・・・」

「なら、私が手伝ってあげる。よーく見てなさい、Sランク冒険者の戦いぶりって奴をね!」


そう言うと、ローラはキングサーペントの元へ走って向かう。

クリソはその自分より小さな背中を見つめることしかできなかった。


「リアンちゃん、もう解除しても良いわよ!!」

「了解!」

「さっさと終わらせて帰るわよ!」


ローラは早速キングサーペントの尻尾を切り落とすと、胴体に一発蹴りを入れ、キングサーペントのバランスを崩す。

バランスを崩したキングサーペントが横たわると、躊躇なく胴体に刀を突き刺し左半分の肉を削ぎ落とす。

猛烈な痛みにキングサーペントは悲鳴をあげていたが、そんなことを一切きにすることはなく、首を落としきる。

首を落とすと、残った体が地面に倒れ込み動かなくなった。

クリソはそんなローラの戦いっぷりを見て、自分よりも圧倒的な強さを持っていることを思い知らされた。

しかし、それと同様になぜ俺を励ましてくれたのか、それだけはわからない。

だが、一つだけわかったことがあるとすれば・・・


「ローラちゃん、後ろ!!」

「え?」


キングサーペントを討伐し、気が緩んでいたその時地面からもう一匹のキングサーペントが出現。

完全にローラの視覚外からの攻撃で避けられないと悟ったローラは目をつむり、攻撃に耐えようとしたがキングサーペントの牙が金属と当たるような鈍い音が聞こえた。

その攻撃を受け止めると、そのままキングサーペントをキングサーペントの死骸のある場所まで押し出す。

そこに立っていたのは先程まで死にかけていたクリソだった。


「二人とも、迷惑をかけてすまなかった。ここからは俺に任せてくれ!!」

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