第12話 勝者と敗者
ローラがオーラとの試合をした翌日、トリン王国にオーラが負けたという情報が飛び交っている。
ローラは昨日の試合を特に何も思っていないようだが、今回敗北したオーラは部屋から出て来なくなってしまったようだ。
昨日あんな試合をしたともなれば当然、ギルド内ではその話題で持ち越しとなり、本人が現れると、大歓声が上がる。
その中には普段からのオーラの立ち振る舞いや、言動が嫌いな人も多くおり、とてもスカッとしたと賞賛されていたが、ローラはそっけなく一言だけお礼を言い受付のカウンターへ進む。
依頼の手続きをしていると、再び受付カウンターの奥からギルド長が姿を見せた。
ギルド長が現れてもローラは手を止めなかったが、ギルド長はそんなことを気にせずに独り言のように喋りだす。
「昨日は見事な試合だったな、さすがはユウキに鍛えられただけのことはある」
その言葉を聞いた瞬間、ローラの手が止まる。
隣にいたリアンも一瞬ビクッと体を振るわせた。
「もしかして、あの人の知り合い?」
「おぉ、そうとも。わしはユウキと何度かパーティを組んだこともある。お前さんらのこともあいつから聞いてたんだよ」
「要するに、私達の実力を試したってわけ?」
「簡単にいうとそうだな、すまん。ただ、あいつは最近調子に乗りすぎていてな、どこかでお灸を据えてやろうと思ってたんだ」
「それで私と戦わせたってわけね」
「圧倒的力量さを見せつけられたら流石のあいつも昔のように、他人を認められる奴に戻れるだろうと思っていたんだが・・・どうやら昨日から部屋に引きこもったままらしい」
「まぁ、それは私には関係のないことね。それよりも、本題があるんでしょう?」
「あぁ。お前さんらのことだが、そのままここでもSランクとして依頼を受けてくれないか?」
「了解、リアンちゃんもそれでいい?」
「え、えぇ。もちろん」
「ありがとう、じゃああとはこいつから依頼を受けてくれ。頼んだぞ」
受付嬢の方を軽くぽんぽんと叩くと、アゲートは去って行った。
受付嬢の子は方を叩かれた時に一瞬驚いていたが、アゲートが帰ったことを確認すると、肩のほこりを払い、ローラの依頼を確認する。
ローラ達が今回受けに行くのは怪鳥コカトリスの討伐。
トリン王国のとある村でコカトリスが出現して農村に甚大な被害が出ているらしい。
鶏のような見た目でありながらも体長が2m近くあり、大きいものだと3mを超えることも。そして何より空を飛ぶことはもちろん、陸地も素早く走ることができる。この怪鳥を討伐しようとするものはローラ達以外に誰一人としていなかった。
依頼の手続きを終えると、被害の出ている村へ向かうため馬車を手配する。
村までおよそ2日間、ゆったりと馬車に揺られながら目的地へ向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます