第11話 対決
「Sランク冒険者を語る愚か者め、俺と決闘をしろ!」
そう男が叫ぶと、周りから歓声や叫び声が湧き上がる。
その声の多さに男は自慢げにこちらを見ていたが、ローラちゃんは未だに首を傾げたまま。
そんな時、受付の奥から白く長い髭を生やした老人が出て来た。
その老人は受付を出ると、ローラちゃんと男の間で立ち止まると、手を大きく開き両手同士を思いっきり打ち付ける。
パンッ!という大音量の音が聞こえ辺りは一瞬にして静まり返り、ローラちゃん以外が老人の方を見つめる。
すると、先ほどまで威勢良くローラちゃんに対して宣戦布告していた男が床に座らせられていた。
「お前らいつまで騒いでんだ、まだ朝だぞ!」
「す、すいません」
「一体何があったんだ、説明してくれよ」
「Sランクを名乗る愚かな冒険者がいたので化けの皮を剥いでやろうかと・・・」
「Sランクだぁ?一体誰のこと言ってんだ」
「あ、あそこにいる二人組です」
そう言いながら私の方に指をさすと、老人もじっとこちらを見つめ始める。
しばらく見つめた後、ニヤリと笑い男の方へ向き直る。
「よし、そこまでいうのならばお前が対決すればいい。ただし負けたら、わかってるな?」
「もちろんです!!」
「よし、なら話は決まりだ。そこの嬢ちゃん、名前はなんていうんだ」
「私?ローラだけど」
「ローラか。俺はここのギルドマスターのアゲートだ。そしてさっきお前に突っかかっていたやつがオーラ、このギルドでAランクまで昇格している実力者だ。しかし、こいつはいかんせんお前さんのことを認めたくはないらしい。だから、一回だけ手合わせに付き合ってやってはくれないか?」
「別にいいわよ、暇だし」
「そうと決まればついて来な、とっておきの場所を案内するぜ。もう一人の嬢ちゃんもついて来な、特別席で観覧させてやるよ」
「わ、わかりましたわ」
とっておきの場所、という言葉を聞いた瞬間にギルド内にいた人々は全員一斉にギルドから出て行ってしまう。
一体何が起こったのか、この時のローラ達はまだ何も知らなかった。
ローラとオーラが老人の後をついていくと、途中で道が二手に別れていて、そこから二人は別々の部屋に案内される。
ローラが案内されてた部屋にはお茶菓子と剣が机の上に上がっていた。
剣を手に取ると、剣先を見つめ軽く素振りをした後剣を机の上に戻す。
その後はお菓子を食べながらゆっくり過ごしていると、扉をノックされる。
扉を開けると、目の前には執事姿の男が一人立っていた。
「ローラ様、準備の方は整いましたでしょうか?」
この瞬間に自分がこれから何をするのかを理解したのか、ローラは剣だけを持ち、執事の後を着いて行く。
執事の後を着いて行くと、段々と歓声が聞こえて来る。あぁ、懐かしいこの感覚、気持ち、歓声・・・
案内された先、それは闘技場であった。
この国で昔に開催され、現在では禁止となっている闘技場での戦闘を未だ密かに行っている。
中心では既にオーラが待ち構えている。観客席を眺めると、一番上の席にはリアンが座っている。
昔を思い出す、ローラの中で懐かしさが蘇る。その間にもアゲートが立ち上がり、宣誓を始める。
「それではこれよりオーラとローラの試合を始める!試合終了はどちらかが戦闘不能になるか、降参するまで。では、はじめ!!」
宣誓の後、一番上の鐘の音が辺りに広がる。
ローラは特に構えもしていなかったが、オーラはしっかり構え、ローラの様子を伺っていた。
しかし、どれだけ待ってもローラは動こうとしない。それにしびれを切らしたのか、オーラは剣を下げ、ローラに向けて叫ぶ。
「お前、いつになったら始めるんだ!もう試合は始まっているのだぞ!!」
「あぁ、ごめんなさい。ちょっと懐かしくなっちゃって」
「はぁ、お前何言ってんだ?」
ローラが剣を握りしめた瞬間、オーラも受けの体制を取ろうとしていたが、その隙にローラが背後まで移動し、剣の持ち手の部分でオーラの腹を思いっきり突く。
オーラは闘技場の端まで砂煙をあげながら転がり、砂煙が晴れる頃にはローラはオーラの上に馬乗りになり、剣先を首筋まで近づけている。
オーラが気絶したことを確認すると、そのままローラはスタスタと歩いて自分の出て来た所まで戻っていった。
あまりの速さに観客も審判も唖然としていたが、自分の役目を思い出した審判が高らかに名前を叫ぶ。
「し、勝者、ローラ!!」
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