第10話 ギルド

朝、リアンが目を覚ますと隣でまだローラがぐっすりと眠っている。

リアンがローラのほっぺを軽く突くと、ローラは寝返りを打ち、また夢の世界へ戻ってしまった。

今日は特に予定があるわけでもないので、ローラを起こさぬようにそっとベッドから降り、持って来たカバンから白のワンピースを取り出し、着替える。

着替え終わると、リアンは部屋を出て外にあるパン屋まで向かう。

そこでクロワッサンを四つと飲み物を購入すると、再び宿屋の部屋まで戻り、部屋の隅にある小さなテーブルにクロワッサンの入った袋を置く。

さて、予定は無いとはいえ色々と見て回りたいし、ローラちゃん起こそうかな。

リアンがローラの肩を優しく揺さぶると、ローラは布団を被り、起きるのを拒絶した。

リアンはため息を吐くと、ローラの耳元に寄りボソボソと何かを呟く。すると、ローラは飛び起きてリアンの方を見つめる。


「おはよ、ローラちゃん」

「お、おはよう。ね、ねぇさっきの言葉って」

「え、何かしら?私は覚えてないわ」

「ちょっと待って、絶対嘘でしょ」

「さ、早く着替えてご飯食べましょう」


リアンはローラの質問を完全に無視しながら、隅にあったテーブルを部屋の中心まで移動し、朝食の準備を進める。

ローラが着替えを終える頃には朝食の準備は終わっていた。

二人は食べ進めながら、今日をどう過ごすか話し合う。

リザニウムの情報を集めるためには情報を集めなくてはならない。

そこで、一番情報が手に入りやすく、勝つ人と交流できるギルドに行き、クエストを受けながら情報を集める。

その方針でしばらく行動する事に決めると、二人は朝食を食べ終えてから早速、近くのギルドへ向かう事に。

ギルドの場所はすぐに分かった。というのも、外観が自分たちのところとほぼ変わらないからだ。

ギルドの扉を開けると、中には朝ということもあってか人が少なく、静寂に包まれていた。

ローラ達は何も気にする事なく、受付のカウンターまで進む。

受付嬢がローラ達を見ると、書類仕事を辞め、笑顔で話し始める。


「いらっしゃいませ、新人の方ですか?もしお持ちであればギルドカードを提示してもらえますか?」

「えぇ。これが私達二人分よ」


ローラがそう言いながら受付嬢にギルドカードを手渡すと、さっきまで笑顔だった受付嬢の表情が一変し、大声で叫び出す。


「え、Sランク!?しかも二人とも!?」


その言葉を聞いた瞬間、辺りはローラ達の方を振り向き、どよめき始める。

Sランク冒険者はほんの一握りしか存在しない人達であり、それが二人いるという光景に受付嬢は驚きを隠せなくなっていた。


「それで、私達これから依頼を受けたいのだけれど」

「は、はい!今、お出しできるものを見つけて来ますので少し待っててください」

「その必要はねぇよ」


受付嬢が依頼を探そうとした時、ギルドの扉の方から男の声が聞こえた。

男の方を振り向くと、男はギルドの扉に寄りかかりながら腕を組んでこちらを見つめている。

男はこちらに近づいてくると、ローラに向かって指を刺して叫ぶ。


「Sランク冒険者を語る愚か者め、俺と決闘をしろ!!」


後ろであわあわと受付嬢は慌てていたが、指を刺されている当人のローラちゃんは、今の状況が理解できていないようで首を傾げていた。

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