第9話 トリン王国

馬車を運転し続ける事数時間、日が暮れ始め辺りが夕焼けに包まれる。

夕焼けの先に、目的地であるトリン王国の吊り橋が見えて来た。

橋の近くまで馬車を向かわせると、橋の前で待機していた三人の兵士達に行く手を阻まれる。

そのうちの一人が、馬車の運転をしているリアンの元へ近付き、話しかけた。


「失礼ですが、身分証を拝見してもよろしいですか?」

「えぇ、もちろんよ」


リアンはポケットから自分の身分証を手渡す。

兵士は受け取った身分証を確認するなり、勢いよく敬礼をした。


「た、大変失礼いたしました!まさか、ガーネ王国国王のお嬢様だったとは!!」

「あら、そんなにかしこまらなくてもいいのよ?それよりも、通ってもいいのかしら?」

「もちろんです!どうぞお入りください!!」


二人は橋を渡り、目的地であるトリン王国に入国する。

トリン王国は自分達の国よりも建物の数は少ないが、何やら美味しそうな香りが色んな所から溢れている。

荷台で横になっていたローラも飛び起き、荷台から顔を覗かせた。辺りをキョロキョロと見渡している姿はとても子供らしい。

馬車から降りると、ローラは早速街へ繰り出した。リアンも馬の預け入れを終わらせてからローラを追いかける。

街へ出ると、屋台や家などの屋根にデコレーションが施されており、見栄えがとても華やかになっている。

今にも食べ物に手を出しそうなローラを捕まえると、リアンは先に宿屋のチェックインを済ませた。

ローラはブーブーと文句を言っていたが、部屋に入ると大人しくなって荷物の荷ほどきを始める。

が、すぐにローラのお腹の音が聞こえて来てしまったので、仕方なく先に夜ご飯を済ませてしまうことにした。

外に出て、改めて屋台を見ると様々な種類の屋台で賑わっている。

ローラがまず目につけたのは豚の焼き串、焼き串を三本注文すると、袋に入った状態で提供された。

これなら手は汚れないと思って肉に思いっきりかぶりつく。

うん、豚の旨さとタレが素晴らしい味を生み出している。あっという間に三本の焼き串を完食。

リアンはというと、ローラの近くに売っていた焼きそばを選んでいた。

容器いっぱいに入っている焼きそば、こぼさないよう慎重に近くのテーブルまで運びゆっくりと食べ進める。

ソースの濃い味と野菜の旨味、そしてたまにあるお肉が嬉しさを掻き立てる。

リアンが焼きそばを食べ勧めていると、途中でローラが隣に座った。

リアンの焼きそばを見ながらリアンに何かを訴えかけるような目で見つめると、残っていた焼きそばの半分を近くの小皿に取り分け、ローラに渡す。

焼きそばを受け取ると、ローラはすぐさま口に運ぶ。余程美味しかったのだろうか、両手を頬にそえ、ニヤけている。

その後も、二人は色々な料理を堪能し、宿に戻る頃にはお腹いっぱいでしばらく動けなくなっていた。

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