第8話 いざ、トリン王国へ
各地にあると言われているリザニウムを回収するため、2人はトリン王国へ向かう準備を進めていた。
トリン王国行きの馬車を手配し、食料も多めに買い込み準備は万端。
一つ問題があるとすれば、馬車を運転してくれる人がいないって事かな。
というのも、ついさっきトリン王国行きの団体が出発してしまい2人は乗り遅れてしまったのだ。
乗り遅れた原因はリアンのせい。
旅行に行くわけでもないのに服を選ぶのにあんなに時間をかけて、挙げ句の果てには服を全部持って行くとか言い出すし・・・服くらいあっちで買えばいいのに。
でも、出発してしまったものは仕方ないし、また別の日に改めるしか・・・
ローラがそう思って後ろを振り向いた時、さっきまで後ろに居たはずのリアンが消え、どこに行ったのか探していると、馬車の方から私を呼ぶ声が聞こえる。
「ローラちゃん、何してるの?早く乗りなよ」
「え、運転出来るの?」
「当たり前じゃん!いつか必要になるかと思っててさ」
「リアンちゃん・・・!」
「さ、後ろの荷台に乗って。トリン王国まで出発だよ!」
リアンの運転の元、馬車が動き出す。
馬車が王国を出ると、ローラは荷台から少し顔を出して外の景色を眺めていた。
空は一面が青く、雲一つない晴れ模様で、暖かな日差しが差し込んでくる。
馬車の進むゆっくりとしたスピード、そして暖かな気温。
まさにお昼寝にはもってこいの状態。でも、先にお昼ご飯を食べよう。
持ってきた袋の中から藁で作られた弁当箱を取り出す。中を開けると、ローラの手作りしたサンドイッチが大量に入っている。
これは、馬車に乗っている間にも簡単に食べられるようにと思って作って来たのだが、リアンちゃんが運転していることを考えると、これを作って来て本当に良かったと思える。
具は卵とハム、レタスとトマト、チーズの三種類。
どれもとても美味しくできてる。特にレタスとトマト、レタスのシャキシャキ感が消えず、トマトの瑞々しさも残っているまさに完璧。
これを早くリアンちゃんにも味わって欲しい。でも、今は運転中だし・・・あ、そうだ!
ローラはとあることを閃くと、弁当箱を持ち、リアンが運転している隣に座り込む。
「どうしたの?何かあった?」
「私1人で食べてても、つまんないからさ」
「・・・え、何もしかして寂しくなっちゃったの!?あらぁ、可愛いわねぇ」
「そ、そういうわけじゃないし!それにあなたに渡しても食べにくそうだし、手伝ってあげようかと思っただけよ」
「手伝うって言いますと?」
リアンに聞かれると、ローラはカバンからサンドイッチを手に取り、そのままリアンの口元まで持って行く。
「ほ、ほら早く食べなさいよ」
「え、え、ローラちゃん、もしかしてデレ期来た?」
「いいから早く食べなさいよ!」
ローラはリアンの口の中に躊躇せずサンドイッチを突っ込んだ。
リアンは衝撃で一瞬後ろの方まで仰け反ったが、なんとか立て直し、元の姿勢に戻る。
「うん、美味しいわね。よくできてるわ」
「えへへ、そうでしょ。もっとあげるね」
そう言うと、ローラは嬉しそうにサンドイッチを取り出す。
あぁ、ここが馬車の運転席じゃなかったらいますぐに襲いたいわ、押し倒して、あんなことやこんなことを・・・
リアンが小さく笑いを漏らしながらにやけていたが、妄想に浸っている間に、気がつけばサンドイッチを全て食べ終わり、ローラも後ろの荷台に戻っていた。
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