第4話 新人と先輩

王都へ帰還した二人はワーベア討伐の報告をしにギルドへ向かう。

ギルドに入ると、中から賑やかな声が聞こえてくる。

大きな声で笑う者、酒を飲みながら騒いでいるものなど様々な人が集まっていたが、ローラ達を見ると一瞬場が静まり返る。

それもそのはず、この場にいる人で彼女達を知らないものはいない。彼女達が歩くのを彼らはただジッと見つめている。

小柄な受付嬢の元へ行くと、彼女はビクビクと震えていたが、必死に笑顔で対応した。

ローラが腰に巻きつけていたポケットからワーベアの頭部を取り出すと、彼女はいまにも泣きそうな顔になっていたが、続けざまにワーベアの頭部をポケットから出そうとした時、ローラの頭をリアンが叩く。


「頭を出すんじゃなくて、魔石を渡すだけでいいっていつも言ってるでしょ!」

「そうだったっけ?」

「首を傾げてもダメよ!受付の人困ってるじゃない、ていうか泣いちゃってるじゃない!」


ローラはワーベアの頭をポケットにしまうと、中から袋を取り出して受付嬢に渡す。

受付嬢が怯えながら袋の中を確認すると、中にはワーベアの魔石が10個入っていた。


「は、はい、確かに受け取りました。こちらが今回の報酬になります」


涙を堪えながらお金を袋に詰め、報酬金としてローラに手渡したが、ローラはリアンにそのまま袋を渡し、スキップをしながらギルドを出て行く。

リアンは受付嬢に一言謝ってからローラを追いかける。

二人が出て行った後、ローラの対応をしていた受付嬢は隣で仕事をしてた先輩の胸に涙を浮かべながら抱きついた。

先輩が受付嬢の頭を優しく撫でていると、少しずつ話を始めた。


「き、急にワーベアの頭が出てきて、すごく怖くて・・・なんなんですか、あの人」

「あの子はね、いつもああなのよ。リアンちゃんがクエストの結果報告しにくる時は普通なんだけど、ローラちゃんの場合だとたまに頭を出してきちゃうのよねぇ」

「でも、あれを持ってる意味ないですよね?素材としての価値もあまりないし・・・」

「あぁ、あれはローラちゃんの趣味よ」

「趣味!?」

「あの子、モンスターとかの首が大好きなのよ」

「へ、へぇ。変わった趣味をお持ちの方ですね・・・」

「私も最初はびっくりしたけど、いずれ慣れるわ」

「そうなんですか。ちなみに、先輩が対応した時は一体何の頭が?」

「確か・・・ドラゴン、だったかしら?」


その話を聞いた瞬間、先程まで先輩の胸に顔を埋めて泣いていた受付嬢が顔を起こし、真剣な表情で先輩に問い掛けた。


「・・・先輩、私ここ辞めていいですか?」

「ダメよ、慣れるまでは一緒にいてあげるから頑張りましょう」

「約束ですからね!?」

「はいはい、わかったわ」

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